
健太と俺は、古びた図書館の奥にある禁書コーナーの前に立っていた。司書が言うには、長い間誰も近づいていないはずなのに、まるで誰かがいるかのように本が動くことがあるという。
「行くぞ」
健太がページをめくり始める。
薄暗い空気が漂い、室内はひんやりしていた。書棚もなく、ただ埃をかぶった本が並ぶ。しかし、一冊だけ、異様に新しい本が目に留まった。
「……これ、何だ?」
健太はその本の表紙を見つめている。俺はふと、その本に手を伸ばした。
【この本を読んではいけません】
背筋が寒くなる。
「おい、どうした?」
健太が尋ねる。
「いや……ただの本だ。」
そう言いながら、俺はページをめくった。
【読んだら、もう戻れない】
何かが視線を向けている気がした。振り返るが、健太はまだ本を見ている。
【あなたは今、孤独ではない】
その瞬間、周囲の音が消えた。
「おい、何か言ったか?」
健太の声が遠くに感じる。
目を上げると、書棚の影がわずかに変わっている。さっきまであったはずの本が、今は一冊も見当たらない。
嫌な予感がする。ここにいるのに、出られなくなる——そんな確信が頭をよぎる。
「健太……?」
俺は急いで出口に向かおうとした。しかし、足が異様に重い。何かに引き寄せられているのか?
「おい、黙ってるな!」
健太の声が響く。出口は、開いているのに。
俺は、確かにここにいるのに。
メモの最後の一文に気づく。
【この場所では、本の背表紙から声が聞こえてきたら、もう遅い】
その瞬間、理解した。
夜な夜な禁書コーナーから声が聞こえていたのは、閉じ込められた誰かが助けを求めていたからだ。しかし、それに気づいたときには、もう遅い。
「おい!何か動いてるぞ!」
健太の声がした。
俺は何も動かしていない。
でも、俺のすぐ後ろから——
カサカサ。
音が鳴った。
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