
私は葬儀社に勤めている。
最近、ある依頼を受けて遺品整理を行うことになった。依頼者は高齢の女性で、亡くなった夫の遺品を整理したいとのことだった。彼女は一度も遺品を見たことがないという。
作業を始めると、古い家具や衣類、そして日記が出てきた。その日記には夫の若い頃の思い出が綴られており、彼女の知らない顔がそこにあった。彼女は涙を流しながら、夫を偲んでいた。
作業は順調に進んでいたが、ふと倉庫の隅にある箱が目に入った。埃をかぶり、色あせたその箱には「大切なもの」とだけ書かれていた。私はその箱を開けることにした。
中には古びた写真が何枚か入っていた。その中の一枚には、見知らぬ女性が夫に寄り添う姿が写っていた。私は驚き、何か不安な気持ちに襲われた。彼女にこのことを伝えるべきか迷ったが、結局言うことはできなかった。
作業が終わる頃、先輩の葬儀ディレクターが倉庫に入ってきた。彼はその箱を見て、驚いた様子を見せた。「それは…彼が大切にしていたものだ」と呟いた。
その瞬間、私は何かが背後に迫る気配を感じた。振り返ると、暗闇の中から誰かがこちらを見つめているような気がした。気のせいだと思い直し、私は依頼者に遺品を渡しに行った。
依頼者はその後、何かしらの違和感を感じたのか、急に体調を崩し、病院に運ばれたと聞いた。実際、彼女の夫は生前、他の女性と密接に関わっていたらしい。彼女がそのことを知ることはなかったが、夫の遺品を整理することで何かを感じ取ったのかもしれない。
数日後、依頼者は無事に退院したが、夫の思い出を整理したことで心に何かが残ったようだった。私はその後、倉庫の中が妙に重く感じるようになった。あの箱に触れたせいなのか、果たして何が起こったのかは今もわからないままだ。夜が来るたびに、また誰かが私を見つめている気がする。恐怖は消えず、心の奥に残り続けているのだ。
不安な気持ちが引き起こしたのは、ただの妄想だったのか、それとも本当に何かが起こったのか。私にはわからない。だが、あの日記と写真は、私の心に深く刻まれたまま、永遠に消えないのかもしれない。
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