
「ああ、あなたもそういう症状なんですね。」
薄暗い美容院の待合室で、隣に座る美容師が不安そうに言った。
「視界にぼやけた影が見えるってやつですよね?」
「うーん、それとはちょっと違うかも。最初は光の加減かと思ったんですけど、いつの間にかずっとそこにいるんです。目のど真ん中に、真っ黒な影が。」
言葉を続けると、彼女の目元が不安そうに揺れる。影はまるで自分の視界を占領するかのようで、次第に疲れが増していく。まるで目の病気か幻覚のように思えるが、薬は使っていない。
「それで、その影には何か心当たりがありますか?」
「うーん、特には……強いて言えば、最近亡くなった祖母の影響かもしれません。」
「亡くなった方の影響?」
「ええ、彼女がいつも言っていたんです。『鏡には何かが映る』って。だから美容院に来るたびに、鏡を見つめるのが怖いんです。たまに、何かが映っているような気がするから。」
美容師は眉をひそめる。「それはちょっと気味が悪いですね。」
「そうなんです。特に今日は、何かが見えそうで……でもはっきりとはわからない。」
その時、彼女がくしゃみをした。
「すみません、花粉症で。」
「いえ、大丈夫です。」
すると、突然ミラーの奥に何かが映った。彼女が振り向くと、彼女の背後に立つ人影があった。目を凝らして見ると、影の部分がじわじわとこちらを見つめ返してきている。思わず目を逸らす。
「あなた、大丈夫ですか?」
「ごめんなさい、ちょっと見えた気がして。気のせいかもしれません。」
しかし、心の中では確信があった。影は、ただの幻影ではない。何かが彼女に近づいている。思わず声を上げると、彼女は黙ってミラーを見つめ続ける。
「それにしても……あれは一体何なんでしょう?」
その瞬間、彼女の顔が青ざめ、顔を下に向けたまま硬直した。彼女の目から、何かがこぼれ落ちていた。血のような液体とともに、何かが流れ出ているのが見えた。
「うわっ……」
思わず飛び退く。彼女の目の中から、異物がはみ出している。恐怖が押し寄せ、彼女を揺さぶる。目の中からは、異形の触手がうねうねと動いていた。まるで、彼女の中に封印されていた何かが解放されたかのように。
「お願い、助けて!」
その叫びが響いた瞬間、全てが闇に飲み込まれた。美容院は静寂に包まれ、ただ影だけがゆっくりと動いていた。彼女の目はもう、何も映さない。ただの空虚な穴となり、彼女は影に飲み込まれるように消えていった。
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