
私の部屋には、古びた人形がありました。母から譲り受けたもので、目を閉じると美しい声が響く小さな人形でした。子供の頃からその人形が大好きで、母が訪ねるたびに遊んでいたので、譲ってくれたのです。母が若い頃に亡くなった祖母から贈られたものだそうで、私にとってはとても大切な品でした。
ある冬の夜、母が急死しました。
次の日、葬儀の準備をしているとき、私は部屋で着替えていました。その時、不意にあの人形が鳴り始めました。
いつもと同じ声でしたが、私の心のせいか、今まで以上に静かで悲しい響きに聞こえました。母が私に別れを告げてくれているのかもしれない。涙が止まりませんでした。
きっと、この人形は母と繋がっているのだろう。そう思いました。
葬儀が終わり、母を見送った後も、彼女のことを思い出すと涙が止まらず、その日は部屋で泣いていました。するとまた、人形が鳴り始めましたが、今度は音が途切れ途切れで、まるで消えてしまいそうに感じました。
母が私を慰めてくれているのだと信じていました。
しかし、突然、バキンという音がして、メロディが途絶えました。
心配になり、人形を確認すると、いつもは美しい目が壊れていました。信じられないほどの壊れ方に、私は恐怖を感じました。
母はどうなってしまったのか。
怖くなった私は、近くの公園にその人形を捨ててしまいました。
その晩、夢を見ました。
暗闇の中で、母が悲しそうに泣いています。
「どうして、どうして!」と叫んでいます。
何か声をかけようとすると、母は何かに引きずられ、暗闇の中に消えていきました。
人形を捨てたせいで、母に何かひどいことが起きてしまったのではないか。今でも、私はそのことを後悔しています。
私には、もう人形を取り戻すことはできませんでした。彼女のメロディは、闇の中に消えていったのです。
それからというもの、人形の声が頭の中で響き続け、私は安心して眠ることができなくなりました。
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