
新居に引っ越してきたのは冬のことだった。高層マンションの一室に、若いカップルでやってきた。見た目は新しく、駅近の立地は申し分ない。だが、初日から何かがおかしいと感じ始めた。
最初の異変は、深夜に聞こえる足音だった。部屋の中を誰かが走り回っているような音が、時折響き渡る。音は昼夜を問わず続き、心に不安の種を植え付けていった。
ある晩、仕事から帰ると、リビングに小柄な女性のシルエットが立っていた。背中を向けているその姿は、明らかに生きている人間のものだったが、顔は見えなかった。驚きと恐怖で動けなくなり、気がつくとその姿は消えていた。
寝室に入ると、何かの気配を感じた。まるで誰かがじっと見ているような感覚。髪の毛が顔にかかる感触に驚き、手で払いのけると、それは消えてしまった。
次の夜、音楽をかけているとノイズが入り、小さな女の子の笑い声がスピーカーから漏れ出してきた。無邪気なその声は、身の毛がよだつほど恐ろしかった。
ベランダでタバコを吸おうとカーテンを開けると、そこには6歳くらいの女の子がしゃがみ込んでいた。窓を開けると、彼女は一瞬にして消えてしまった。
トイレに入ろうとした時、内側から鍵がかかっていることに気づく。中から叩かれる音がして、恐る恐る扉をこじ開けると、当然誰もいなかった。
仕事から帰ると、ベッドの上に不自然な盛り上がりが見えた。布団の隙間から髪の毛が見え、心臓がドキリとする。布団をめくると、そこには何もいなかった。
こうした出来事は日常的に続いているが、今のところ引越しの予定はない。立地の良さに惹かれ、彼女とはこのマンションで共に暮らしていくことに決めた。何かがいるとしても、仲良くやっていけるだろうと。
だが、果たしてそれが可能なのだろうか?その不安は、日々の中で少しずつ育っていく。夜が深くなるにつれ、何かが待っているような気がしてならない。
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