
長編
おじさんの探しもの
(゜Д゜) 3日前
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じながらさりげなく距離を取ろうと後退りました。
するとそのおじさんはもう一度「あの…」と声を掛けてきました。
改札まで15mほど。
何とかおじさんの脇を駆け抜けよう…そう思ったときでした。
「探し物をしているんです。大事な……を探しているんです。一緒に探して下さい…。」
何を探しているのかは聞こえませんでしたが、やはり都市伝説の通り何かを探しているようでした。
恐怖心はますます膨らみ、心臓がドックンドックンと大きな音を立てています。
おじさんはじりじりとこちらに近付きながら「大事なものなんです。大事な……を探しているんです。」と繰り返します。
恐怖で動けずにいると、ようやくおじさんの下半身が見えてきました。
おじさんには…左足の膝から下がありませんでした。
でも歩き方は普通で、ピョンピョン跳ねているわけではありません。
足を欠損している方の歩き方とは思えない、本当に自然な動きで近づいて来るのです。
恐怖で足がすくみ逃げることもできず、何故か目を逸らすこともできませんでした。
少しずつ…少しずつ近づいて来るおじさん。
その時、改札口から数人の話声が聞こえました。
利用者が駅へ入って来たようです。
私は安堵し、ただただ「早く!早く来て!!」と心の中で唱えました。
その間にもおじさんは「大切なんです…本当に大切なんです。」とつぶやきながら近づいてきます。
そして、おじさんが私の脇を通りすぎようと並びかけた時、ホームへ数人の学生が入ってきました。
その瞬間、おじさんが私の顔を覗き込んでこう言ったのです。
「私の足…返してください……」
私はそのまま後ろにのめってドンッと尻もちをつき、おじさんは私を通り過ぎて行きました。
私は急いで立ち上がり、振り向かずに端って改札を出ました。
そして遠回りになってしまいますが、10分ほど離れたバス停からバスを乗り継いで帰宅したのです。
翌日その話を友人や先輩たちにしましたが、誰も信じてはくれませんでした。
紙袋の中身は何だったのか、時間が経ってから気になりましたが、それから二度と一人で駅へ行く事はありませんでした。
それから四半世紀が経ち、その駅は綺麗に立て替えられました。
ただ、未だに無人駅ですし、周りに外灯は少ないままです。
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- 首なしライダー見たいな話だ。かんちゃん