
長編
山男との夏
匿名 21時間前
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「今!今俺の車の目の前を山男の軽トラが走ってる!」
「マジ!?どの辺!?」
この日はまだ夕方、明るい時間だった。
Aから聞いた場所に向かって、俺はバイクを走らせた。
その後もAからの電話が現状報告のようにかかってきて、最終的に山男の軽トラが山の近くのセブンイレブンの駐車場に停車したという報告を受けた。
俺は慌ててセブンに向かった。
俺がセブンに着いた頃には、既に山男の軽トラはなくなっていて、Aが一人、俺の到着を待っていた。
俺の顔を見るや否や、彼はまくし立てた。
「山男が、普通に、セブンに入ってったんだよ!全身布切れで覆ったまま!ほかに客はいなかったけど、店員はマジ引いてたよ!俺見てたんだけど普通に何本か缶ビールと食い物買って、そんで、あの軽トラ乗って、どっか行っちゃったんだよ!」
「顔は見えなかった?」
「全然!目のところだけ布に切れ目があったけど、でも外からじゃ全然見えない」
「やばいな、山男」
「やべえよ、山男!」
山男は普通にコンビニで買い物をする。またひとつ、収穫だった。
それからというもの、俺とAは町中で常に目を光らせ、山男の軽トラを探すようになっていた。町中と言っても田舎の寂れた町なので、人口も車の数も家の数も多くはない。その気になればすぐにでも見つけられると思っていた。
軽トラが停まっていた農道や、初めて山男に遭遇した山の入り口付近は、定期的に見回りもした。何しろ暇な大学生だ。金はないけど時間だけはいくらでもあった。
しかしそれ以降、ぱったりと山男と遭遇することがなくなってしまった。
一度、Aの母親がコンビニで山男らしき不審な人物に出くわして驚いたという話を聞いたぐらいで、俺とAの目の前に山男が出てくることはなかった。
そして日々は流れ、夏が終わろうとしていた。
俺たち大学生の夏休みも残りわずかになり、山男の存在も俺たちの中で薄らいできていた。
そんな時、Aがまたもやビッグニュースを持ってやってきた。
「山男の正体が分かった!」
Aは例によって興奮気味に言ってきた。
今から行っていいかとAから電話があり、彼が俺の家に来てすぐのことだった。
「祖母ちゃんから聞いたんだ、山男のこと、祖母ちゃんが知っててさ」
Aのお祖母ちゃんは90歳近くでもなお元気で、地元生まれの地元育ち。俺も顔なじみの優しいお祖母ちゃんだった。
Aはお祖母ちゃんと同居だっ
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