
姉が大学1年生の頃の話です。
吹奏楽部に所属していた姉は、冬の合宿に参加することになりました。行き先は山奥にある古い民宿で、雰囲気はどこか幽玄な感じがしました。初めての冬合宿に、姉は期待と不安を胸に抱いていました。
数日間の練習を終え、最終日を迎えました。その夜、部員たちの提案で恒例の『肝試し』が行われることになりました。
雪が積もった道を進み、指定されたポイントから印を持ち帰るという5分のミッションです。道中には顧問の先生が見守っていましたが、暗い中での静けさは不気味でした。姉は友人と共に出発しました。
すぐに友人の一人が言いました。
「なんか、後ろから誰かがついてきてる気がする……」
「え、そんなことないよ。ただの風じゃない?」と姉は返しました。
しかし、もう一人の友人が恐る恐る言います。「でも、確かに足音が聞こえる!」
姉は内心ドキドキしながらも、友人たちを励まし、無事にチェックポイントを目指しました。道の脇にある木々の間から、何かの影が見えた気がしましたが、気のせいだと自分に言い聞かせました。
チェックポイントに近づくと、また友人が言いました。「あの影、見えた?」
その瞬間、姉は胸が締め付けられる思いがしました。『霊感』のある姉にはそれが不気味な顔をした男の霊だと分かりましたが、友人たちは何も見ていない様子でした。ただ、何かを感じているのは確かでした。
ゴール直前、姉は影が何かを呟いているのを聞きました。「見えてないのか、お前たちには……!」その言葉に、寒気が走ったといいます。無事に戻ったものの、心の中では恐怖が渦巻いていました。
翌年、合宿場所が変更されると聞いた時、姉はほっとしたと同時に、あの男の霊の存在が今でも忘れられないようです。「本当にムカつくわ、あんな奴がいるなんて!」と、怒り混じりに話していました。彼女は恐怖以上に、あの霊に対する憤りを感じていたのです。
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