本当にあった怖い話

怖い話の投稿サイト。自由に投稿やコメントができます。

新着 長編
これ読んだら一人消える
これ読んだら一人消える
新着 長編

これ読んだら一人消える

怖い 6
怖くない 1
chat_bubble 0
236 views

珠美は、自分の名前の音が日によって違う気がしていた。

担任に呼ばれるときは「たまみ」と聞こえるのに、母が呼ぶと「たまよ」に近い。自分で名札を指でなぞっても、輪郭が定まらない。気のせいだと決めて、毎朝いつも通り制服に腕を通した。

高校二年の春、同じクラスになった英子が、珠美のことを呼ばなくなった。

最初は些細だった。廊下ですれ違うと目を逸らされる。席替えのとき、机の上のプリントが一枚だけ残る。誰かが笑う。珠美が視線を上げると、笑いが遅れて追いかけてくる。

ゴールデンウィークが過ぎる頃には、話しかける相手がいなくなった。珠美が何かしたわけでもない。英子は理由を言わない。ただ、珠美の前ではその名前を使わない。代わりに「あれ」と言った。

「あれ、また来てる」

「あれ、今日も休まないんだ」

珠美は、教室の空気の中で自分だけが薄い紙になったように感じた。押せば破れるのに、破られる瞬間だけが来ない。体育祭も試験も修学旅行も文化祭も、その紙のまま通り抜けた。誰にも触れられないまま、ただ立っている。

十一月の半ば、授業中に英子がふいに顔を上げた。

黒板の文字ではなく、珠美の首元を見た。英子の視線だけが、そこに釘を打つように留まった。珠美は襟を押さえた。何もしていないのに、首筋が熱くなる。

その夜、母が声をかけた。

母は寺の家に生まれ、厳しい言い方をしない人だった。だがそのときだけ、言葉が短かった。

「表を消す」

「何のこと」

「刻まれたものは外せる」

母は財布から十円玉を一枚出した。裏の年号を見せた。製造年月日と小さな数字。そこを、紙やすりで削った。金属の粉が爪の間に入り、息を吸うと舌がざらついた。母は水で薄めた酢を麻布に含ませ、削った面を丁寧に磨いた。

数字が消えた。年が消えた。

母は小さなお守り袋に十円玉と短い釘を入れ、紐を通した。

「削った面を前にして首にかける。家に帰ったら磨く。毎日だ」

「いつまで」

「順番が戻るまで」

珠美はそれを首に下げた。肌に触れる布が冷たく、十円玉だけが妙に重かった。磨くと金属の匂いが強くなった。磨くたび、教室で遅れて聞こえる笑い声が、少しだけ静かになる気がした。

翌日から、異変が増えた。

教室の時計が、珠美が視線を向ける瞬間だけ止まる。止まっているのは一秒にも満たないのに、止まったことだけが残る。黒板の隅に書かれる日付が、翌日になる前に薄くなる。誰も気にしない。誰も見ていないようにふるまう。

1 / 3

後日談:

後日談はまだありません。

アバター 002_012

幽霊より人間が怖いタイプです。

投稿数 33
怖い評価 298
閲覧数 22k

この怖い話はどうでしたか?

f X LINE

chat_bubble コメント(0件)

コメントはまだありません。

0/500

利用規約をよく読んで、同意の上でコメントしてください。

・連続コメントは禁止しておりますが、新規登録・ログインすることで、連続コメントも可能となります。

お客様の端末情報

IP:::ffff:172.30.1.71

端末:Mozilla/5.0 AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko; compatible; ClaudeBot/1.0; +claudebot@anthropic.com)

※ 不適切な投稿の抑止・対応のために記録される場合があります。

label 話題のタグ

search

【参加型】投稿企画・タイアップ企画

  • 禍禍女
  • 心霊スポット
  • 意味怖

一息で読める短い怪談

読み込み中...

じっくり染み込む中編怪談

読み込み中...

深夜に読むと戻れなくなる長編怪談

読み込み中...
chat_bubble 0