
ある冬の寒い夜、僕は久しぶりにタクシーの運転手として働いていた。何年もこの仕事をしているが、時折不気味な出来事に遭遇することがある。今日はその一つを語ろうと思う。
その日、田舎道を運転していたとき、変わった雰囲気の男性が乗り込んできた。彼は喪服を身にまとい、手には小さな骨壺をしっかりと抱えていた。
「家に帰る途中ですか?」と僕が尋ねると、彼は無言で頷いた。静まり返った車内で、彼の視線は前方を見つめ続けている。
目的地は住宅街だった。家に着くと、彼は料金を支払い、骨壺を大切に抱きしめたまま、車から降りて行った。その瞬間、何かが不穏な気配を放った。
僕はサイドミラー越しに彼の姿を見た。彼は地面にしゃがみ込んでいる。心配になり、降りて声をかけようとしたが、思いとどまった。
彼は骨壺を開け、中のものを口に運んでいた。驚愕した。まさか、遺骨を直接食べているのか?
彼は笑顔で、まるで子供のようにそれを頬張っていた。周囲には雪が静かに降り積もる中、彼の手には白い粉がちらちらと落ちていた。
その光景は、思わず目を背けたくなるほど不気味だった。
後日、僕はその晩に夢を見た。見知らぬ男が現れ、絶望的な表情で「なぜ止めてくれなかったのか」と問いかけてきた。
その時、僕は全てを理解した。彼が食べていたものは何か、彼の事情に口を挟むことはできなかった。しかし、骨を食べて消化できるのか、それが気になってしょうがなかった。結局、僕はただの運転手だったのだ。
そして、あの光景は今も忘れられない。運転手としての10年の中で、最も忘れられない出来事の一つだ。
それ以来、夜の運転が少し怖くなったのは言うまでもない。
彼は本当にどうなったのだろうか?それが気になって仕方ない。
あの冬の夜、僕は一体何を見たのだろうか。
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