
長編
A子とK助
めぐりん 2017年7月1日
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ある女がいた。
その女(A子)は男の子(K助)と二人で生活をしていた。
K助はA子の実の子供ではなかった。
A子には姉がいた。
K助は姉の子供だった。
姉が忽然と姿を消し、唯一の肉親だった妹であるA子が子供を引き取ることになる。
K助は目つきが鋭く、普段笑うことがなかった。
A子はK助を大事に育てた。
小さい頃に両親を亡くしたA子。
K助の気持ちは痛いほど分かる。
だからこそ母親である姉が戻るまで、いやA子自身が母親の代わりとしてK助を立派に育てようと決心していた。
A子とK助が二人で生活を始めて一年が経ち、K助も少しずつA子に心を開き始めた。
依然として姉の消息は掴めず、A子もK助と二人歩んでいく考えがより固まっていた。
そんなある日、K助がA子にポツリ、ポツリと姉がいなくなった日のことを話し始めた。
姉はK助と夫である男と3人で暮らしていた。
男は決して良い父親とは言えず、子供であるK助に事あるごとに暴力を振るった。
姉はそれを見るに見かね、ある日K助と二人で男の元から逃げる計画を立てた。
計画を決行する夜。
男が寝静まったのを見計らって、息を潜め姉とK助は家を出る。
家から少し離れてK助はある事に気付く。
大切にしていたオモチャを家に忘れて来た。
事もあろうにK助は、家にオモチャを取りに行きたいとせがみ出す。
やっと掴んだチャンス、今戻ったらまたあの生活に逆戻りだ。
もうこんなチャンスは無いかもしれない。
姉がいくら言い聞かせても、K助は家に戻ると聞かず、泣き始めた。
こんな夜中、近所の人に不審がられたら説明のしようがない。
警察を呼ばれたらそれこそ事だ。
姉は少しの間考え、K助には自分が家にオモチャを取りに行くと伝えた。
K助に、目立たない場所に身を隠すよう優しく話し、姉は家に戻った。
K助が姉を見たのは、それが最後だった。
K助は母親の言いつけ通り、目立たない場所で身を隠していた。
しかしいくら待っても母親は来ない。
やがて朝になり空が白んだ頃、K助は家に様子を見にいく事にした。
家の玄関の扉は少し開いていた。
家の中に入ると、
誰もいない、、、
家の様子は普段と変わりなかった。
リビングに血のついた包丁と、大量の血溜まりが出来ていたことを除いて。
K助はその日から数日間、父親と母親を待ち続けた。
数日後、以前から虐待の疑いがあるとして、定期的に自宅訪問を行なっていた児童相談所の職員が、K助を発見する。
K助はげっそりと痩せ細っていて、憔悴しきっていた。
保護を受け、数日後身寄りである妹のA子に連絡が入り、現在に至る。
当時の自宅の様子はA子も知っていた。
警察が入り、事件性があるとして捜査に乗り出してくれた。
しかし、姉の消息どころか男の消息すら掴めない。
時間が経った今となっては、捜査に進展は期待出来ないだろう。
A子はK助の気持ちになって考え、涙を流した。
そしてK助を抱き寄せる。
K助の肩は震えていた。
辛かったろう、悲しかったろうと女は感情を露わに泣いた。
ぷっ、、ふふふ
K助は笑っていた。
A子は驚きと戸惑いの表情でK助の顔を見る。
K助はにったりと笑いながら、
「うーそっ!二人とも僕が殺した。
数日かけてバラバラにしてトイレに流したんだ。
だから見つかるわけ無いじゃん!
あはははははー」
A子は驚嘆と絶望の淵で意識を失った。
薄れゆく意識の中で、K助の声が聞こえた。
「また会おうね。」
その後、A子は病院で目を覚ます。
K助は姿を消していた。
彼が吐露した言葉は、A子の心の一番深く、本人すら気付かぬ場所に隠された。
警察には捜索願を出した。
しかしその後、いくら探してもK助が見つかることはなかった。
数年後、、
A子はK助とのこともあって、人付き合いに消極的になり、一人寂しく暮らしていた。
生活していく為に、スーパーのパートタイマーの仕事に追われる日々。
仕事にも慣れて来た頃、A子にパート先での仲の良い女友達が出来た。
A子はその友達になら、心を開くことが出来、友達もそれを嬉しく思ってくれていた。
彼女になら、、あの話をしてもいいかな、、、
A子は悩んだ末、友達にK助の事を話そうと決めた。
今まであった事、今現在までK助が行方不明な事、そして心の奥底にしまっている彼が話した衝撃的な言葉を包み隠さず打ち明けた。
友達は、A子の言葉一つひとつをしっかりと受け止めてくれた。
「こんな自分の話を聞いてくれるだけでも、幸せだ。」
と、心から安心している表情のA子に友達は、
「これからは一人じゃない、私が付いているよ。」
暖かい言葉で答えてくれた。
それから一週間後、友達は自宅のトイレで変わり果てた姿になって見つかる。
警察からは、原因不明の変死体としか説明がなかった。
A子は間も無く自殺をした。
自殺の数日前、A子が意味不明な言葉を口走って、自宅付近を徘徊している姿が近所の人に目撃されている。
「また会えたねまた会えたねまた会えたね、、」
と。
この話を聞いた人は、一週間以内に3人にこの話を話すこと。
さもないと話の最後の言葉通り、男の子が会いに来て殺される。
後日談:
- 高校生の時に流行った話を少しアレンジしました。
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