
山奥の有名な観光地なんだが、山奥にある駅で都会から来た一般の電車とケーブルカーを乗り換えて山頂に行くになっている。
電車とケーブルカーの乗り換え駅は、あたりは何もない山の中で下車もできるが乗り換えのためだけにあるような駅だった。
山頂には町があるし、電車に乗り換えて行く先にも当然ながら町があるが、電車とケーブルカーの乗り換え駅周辺だけは何もない山の中だ。
ケーブルカーは交走式のため、最終便が山頂に向かうともう一方の車両が下に降りてくることになる。
下りてきたところで乗り継ぎの電車はないので、山頂から下りてきた客は何も無い山奥に一晩取り残されることになる。
今はそのような問題を解消するため、乗り継ぎのないケーブルカーは客が乗れないようになったが、昔はその列車にも乗ることができた。
俺が若い頃、興味本位にその何もないところで一晩明かすことにした。
乗務員からは念を押されたが、俺はそれでよかった。
そしてケーブルカーが駅に着いた。
わずかな明かりのあるホーム以外に何もないし、誰もいない。
俺は一晩どうしようかなとワクワクしていた。
しばらく駅や近くの山道を散策していた。
別に目を楽しませるようなものはなく、時間が経つと退屈になっていた。
俺は駅のホームの長椅子で仮眠しようかなあと横になっていると、少し離れた麓への電車のホームに白いワンピースのような服の女性がいるのが見えた。
こんなところに女性が⁉︎
俺は心配なのもあるし、ちょっとした話し相手がほしかったのでその女に会いに行った。
だがそのホームまで来ても、さっきみた女はどこにもいなかった。
隠れたのかな?まあ、知らない男性がいきなりきたら不安だしなぁ・・。
と思っていると、線路を挟んで反対側の電車のホームにその女がいて、俺を無表情に見つめていた。
その瞬間、女はこの世のものでないことを悟った。
俺は駅から出て山の中をウロウロして、ときどき駅に帰ってさっきの女はもういないことを確認したあと、震えながらも一晩を過ごした。
翌日、始発のケーブルカーが動き始めたときはこの上ないほど安心した。
それ以来、誰もいない場所で一晩明かすことは二度となかった。
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