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ベランダで夕日を眺めていると思い出す

俺は55才、54才の妻の景子(仮名)がいる。
日曜日の夕方、俺はマンション7階のベランダでたばこを吸っていた。
外を見ると夕焼けが綺麗だった。
しばらくすると、ベランダの引き戸が開き妻が洗濯物を取り込みに来た。
「あなた!たばこの臭いがつくから洗濯物があるときはベランダで吸わないでって何度も言ってるでしょ?」
俺は(じゃあどこで吸えばいいんだ)と思いながらも、部屋でも廊下でも吸えないしこっそりどこかで吸うしかなかったんだが。
それはおいといて、妻は洗濯物を籠にいれて俺もたばこを吸い終えた頃妻に声をかける。
「見てごらん。夕日が綺麗だよ。」
「何よ。急に。」
あと30才若ければロマンチックな台詞なのかもしれないが、今の妻に言っても白けるだけだった。
だが妻は夕日をチラリと見て
「こんなに綺麗なの珍しいわね。」
妻は年を重ねた顔に短いボサボサの髪の地味なおばさんになっていた。
だが俺はふと妻の後ろ姿に、若い頃のロングヘアで細い体だった結婚前の姿を重ねた。
そして後ろから妻を不意に抱いた。
「何するのよ!」
「愛してるよ。景子。」
「さっきから何なの?」
「覚えているだろ?あの日のこと・・」
そう、景子にプロポーズした26才のあの日。
そのときもこんな綺麗な夕焼けだった。
「分かったわ。でも今更そんなこと・・」
「今更ってことはないさ。」
俺は後ろから妻、いや景子を強く抱いた。
景子は振り向いて俺の方をみて、
「こんなところにいても仕方ないわ。あとでゆっくり・・」
「そうだな。」
景子がしばらくぶりに微笑み、和やかな雰囲気だった。
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