
冬の深夜、都心の高層ビルのエレベーターに、若手調査員の北川が乗り込んでいた。目的地は24階だが、突然エレベーターが止まった。画面には「点検中」の文字が光る。彼は上司である先輩の佐藤に連絡を取ろうとしたが、電波が届かない。
「何だこれ、冗談だろ?」と北川が呟くと、エレベーターの中でふと不気味な音がした。振り返ると、薄暗い照明のせいで、もう一人の乗客がいることに気づく。顔がぼんやりとしか見えないその人は、静かに北川を見つめていた。
「あなたも、ここに閉じ込められたの?」と北川が訊ねると、相手は一瞬微笑み、そして何も答えなかった。その沈黙が不気味さを増す。
「おい、君、名前は?」北川は少し声を大にした。「どうせ逃げられないんだから、話そうよ。」
すると、相手はゆっくりと口を開いた。「私の名前は、まだ言えない。その代わり、君に一つの質問をしてもいいかな?」
「なんだ?」
「君は、死にたくないと思う?」その言葉に北川の背筋が凍る。彼は一瞬、逃げるべきか考えたが、エレベーターの中ではそれも無駄だった。
「冗談だろ? こんなところで何を言ってるんだ。」北川は冷静を装おうとしたが、心臓が早鐘を打ち始めていた。
「本気だよ。」相手は無表情で続けた。「実は、君はもう死ぬ運命にあるんだ。」
北川はその言葉に驚愕し、思わず後退る。「どういう意味だ?」
「このビルは、過去に事故があった場所なんだ。君のような人間がここで命を落とした。」
彼は一瞬、過去の事故の報道を思い出した。数年前、エレベーターが故障し、多くの人が犠牲になったというニュース。次の瞬間、エレベーターが揺れ出し、機械音が鳴り響いた。彼はもはや逃げられないことを悟った。
「このままじゃ、俺も同じ運命だ!」焦りが募る中、相手は微笑みを浮かべた。「でも、君には一つの選択肢がある。」
「選択肢?」北川は恐怖に震えながら尋ねた。
「私と一緒に、過去の人たちを解放するか、ただの見物人になるかだ。」
「解放?」北川が言い返すと、エレベーターが急に静まり返った。その瞬間、暗闇が彼を包み込み、視界が真っ暗になった。何かが彼の耳元で囁く。「お前が選ぶんだ。」
翌朝、ビルのスタッフがエレベーターの点検を行うと、そこには北川の姿はなかった。代わりに、彼の名刺が一枚、真っ赤な血に染まって落ちていた。彼は選択を迫られたのだ。どちらを選んだのか、誰にもわからない。
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