
冬の寒い夜、ひとつの古びたアパートの部屋で、私はカナリアの世話をしていた。小さなその鳥は、私の言葉を真似て歌ったり、時には意味不明な音を発したりした。初めてのペットだったので、私はその愛らしさに夢中になっていた。
「カナちゃん、カナちゃん」と呼びかけると、「カナちゃん、カナちゃん」と返す。それ以外の時は「ピピピピ」と高い声で鳴いたり、時には「ウワァァァン」と大きな声を出したりしていた。飼い始めてから少しずつ、カナリアの言葉を覚えるために、私は毎日話しかけることを欠かさなかった。
しかし、母は全く興味を示さなかった。仕事から帰った母は、私が可愛がるカナリアに目を向けることすらなかった。私が世話をすることが日常になり、次第に母の機嫌が悪くなることが増えた。夜遅くまで帰らないことや、無駄にお金を使うことで、母は私を怒ることが多くなった。
「お前は本当に無駄なことばかりしているな。」
母の怒りはいつも私に向けられた。いつしか、カナリアの声が私の唯一の慰めになっていた。冬の寒さが厳しくなるにつれて、私の心も冷えていくようだった。母の口から出る言葉はいつも冷たく、私は母の言葉に怯えながら生活していた。
ある日、カナリアが突然、私が言ったことを繰り返し始めた。「お母さん、嫌いだ」「お母さん、消えて」と。驚いた私は、「カナちゃん、そんなこと言ったらダメだよ!」と注意したが、カナリアは止まらなかった。「お母さん、消えろ!」「お母さん、消えろ!」
その声が、私の心に何かを呼び覚ました。カナリアの声はまるで私の心の叫びを代弁しているように感じられた。私はその声を聞くたびに、母への恨みが膨れ上がるのを感じた。夜、カナリアはさらに恐ろしい言葉を繰り返し始めた。「殺さないと、殺される」「殺さないと、殺される」。
私はその言葉に恐れを感じつつも、どこか心の奥でそれを受け入れていた。カナリアの声に導かれるように、私は自室を抜け出し、キッチンの包丁を手に取った。母の部屋へ向かう道すがら、カナリアの言葉が頭の中で反響し、私は自分の行動に確信を持ち始めた。
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