
それは私がまだ5、6歳の頃、古いアパートに住んでいた時の出来事です。
その晩、兄が「明日の授業で本が必要だ」と言い出しました。私はそれに付き合うことになり、兄に促されて部屋を出ました。アパートの廊下は薄暗く、冬の冷たい空気が漂っていて、夜の静けさが不気味でした。
兄は本を探しに、奥の部屋へと歩いて行きました。私はその後をついていくしかありませんでした。部屋に着くと、兄はさっさと本を探し始めました。
その間、私はドアの前で待っていることにしました。暇だったので、壁のシミを数えたり、間の空気の異変を感じたりしました。すると、数分後、兄が静かに何かを呟く声が聞こえました。振り返ると、そこには兄の姿がありませんでした。代わりに、青白い肌の見知らぬ少年が目の前を通り過ぎました。無表情で、全裸のその姿は、今でも忘れられない恐怖でした。
急いで廊下を駆け戻り、居間に飛び込みました。そこには、兄が普通に座っていました。
「え、兄ちゃん、どうしてここにいるの?」
「え?先に戻ってきたよ。あそこ、怖くなって…」
その瞬間、私は言葉を失いました。兄がメインの部屋から出てきたことに気づかなかったのです。ドアは一つしかなく、私が立っていた位置からは視界が開けているはずなのに、どうしてその瞬間を見逃したのか、理解できませんでした。
私はパラレルワールドに迷い込んでしまったのかもしれません。そして、目の前を通り過ぎた青白い少年は、あの世界の住人だったのかもしれないと考えてしまいました。どれだけそのことを考えても、以後その少年に再び遭遇することはありませんでした。私はただ、あの夜の出来事を忘れられずにいるのです。夜の静けさが、今でも不気味に感じられます。
何が本当に起きたのか、今もこの胸の中に不安が渦巻いています。あの青白い少年は、どこから来たのでしょう?そして、私が見たものは一体何だったのでしょうか。
後日談:
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