
放課後の図書室で、幼馴染の優斗はいつも隣に座る。
「紗季、またその本?」って、笑って。
昔から距離が近いのが普通だったから、私も別に気にしてなかった。
でも最近、ちょっと変だった。
スマホが急に機内モードになったり、知らない番号から無言電話が何回も来たり。
あと、家の玄関の靴が、朝と向きが違うときがあって。
最初は「家族が直したのかな」って思ったけど、母に聞いたら「触ってないよ」って言う。
怖くなって、防犯ブザーとか小さいドアストッパー買った。
レジで袋受け取った瞬間、ガラスに映った自分の後ろに、優斗がいた。
「同じの買ってるじゃん」
優斗が笑って、同じ袋見せてきた。
「え、なんで……」
「だって、紗季が怖いなら、俺も怖いし。対策しないと」
その言い方がなんか変だった。
“俺も怖い”って、同じ相手に対して言ってるみたいで。
その夜、寝ようとしてたらスマホが震えた。非通知。
無視したら、メッセージが来た。
《起きて》
え、ってなって、次に送られてきた動画を開いたら、私の部屋が映ってた。
机とかカーテンとか、全部うち。
しかも最後の方、私が寝てる姿まで映ってた。
カメラの位置、天井の角っぽい。
慌ててそこ見たら、黒い小さい点があって。
今まで「壁の汚れかな」って思ってたやつ。
その時またメッセージ。
《ちゃんと見てるから安心して》
安心できるわけない。
「警察……」って思った瞬間、玄関の方から音がした。
ドアノブが回る音。
次に、ドアストッパーに当たる鈍い音。
誰かが、外からドア押してる。
手が震えながらスマホ見たら、ちょうど着信。
優斗。
出たくないのに、なぜか出ちゃった。
「もしもし、紗季?」
いつもの声。普通に優しい。
でも、玄関がまたギシって鳴った。
「ねえ、開けて」
優斗が言った。
「……なんで」
って言ったら、優斗がちょっと笑った感じで、
「だって、紗季が対策したら、俺入れないじゃん」
頭が真っ白になった。
“入る”って何。家に?
「紗季の部屋って、俺の部屋でしょ?」
優斗が当たり前みたいに言う。
その瞬間、玄関の鍵が回る音がした。
外からじゃない。内側から。
え? って思って、全身が冷たくなった。
電話の向こうで優斗が、すごく嬉しそうに言った。
「大丈夫。知らない番号のやつ、もう消したから。これからは俺の番号しか鳴らない」
ドアの向こう、廊下の方から足音が近づいてくる。
スリッ……スリッ……って、靴下の音。
優斗が最後に小さい声で言った。
「ずっと見てたよ。家の中から」
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