
中編
金縛りにしてほしかった話
匿名 2023年8月6日
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初めて怪談を書くので駄文失礼します。
今現在住んでる家での実話
なんならこれを書いてる今この部屋での話
うちは昔から何かと"いる"んだけど、特に害もないのばかりなので気にならないわけではないが普通に暮らしてる。
そんな中で一回だけヤバイのが来たことがあった。
10年そこら前の話
件の日は布団を被っていたので多分秋冬くらいだったと思う。
夜中にとてつもない悪寒で叩き起こされた。
風邪とか高熱出る前兆を何倍も強くした感じで、背骨を全部氷製にでもすげ替えられたんじゃないかってくらい。
壁を向いた横寝の体勢のまま壁を見ながらマジで辛めの風邪だと思って「起きて辛かったら栄養ドリンク」の精神で丸まってそのまま二度寝した。
ちなみに私は今でも風邪は栄養ドリンクがぶ飲みで治ると信じてるし実際治る。
翌朝、予想に反して体調は面白いくらい普通で拍子抜けしていた。
面白みのない普通の日を過ごして普通に就寝。
そして昨日と同じ悪寒に叩き起こされた。
(うわ、また?)
と目を覚まして思う間もなく思考停止した。
昨日と違ってたのは体の向きだった。
壁に背を向けている。
つまりは部屋の中がばっちり見える。
ばっちり...いる。
よくある幽霊もの御用達の白い服
長い髪に隠れて性別はいまいち不明(多分女)
足もあるし床についてて浮いてなんかない
汚くないし清潔感のある身なりに思う
ただ、丸まった背中がべったり天井についている
長いんだ異様に。
3.5〜4mはある。
そしてそれが自然体だと思えるほど存在感が強かった。
霊能トークなんかあまりしたことないから上手く説明できないけど個人的にはあれらから感じる存在感が強さだと思う。
それが今まででダントツ最強だった。
私が放心しているとそれは動き出した。
背中を天井に擦りながらゆっくり歩き出す。
ズリ...ズリ...って音が聞こえた気がする。
どうしていいか分からない
目を逸らしちゃいけない気がして目だけが追う
(これ実は昨日も居たんだろうな)とか呑気な自分が頭の隅にいる。
そいつは少しの間部屋の中心あたりをぐるぐる円を描くように歩いているだけだった。
あぁ、あれは多分私を認識していない。
あれはここに在るだけなんだ。
じゃあ認識されたらどうなる?
ただ在るだけでこんなヤバイのに気づかれたら?
確実に死ぬ。
今は笑えるけど本気でそう思った。
バイクで転けて崖に突っ込みそうになった時ですらこんなに死を感じなかった。
さっきまで驚きと恐怖と少しの好奇心で保たれていた脳内が一気に崩れた気分。
歯がガチガチ鳴る
体全体が震える
息が上手くできない
歯と衣擦れの音がとてつもなく大きい
仕損じた呼吸の音に咄嗟に口を覆いたくなる手を止める
動けば、音を出せばこちらを見るんじゃないか
恐怖しかない
歯を食いしばって体を全力で抑えながらただ見る事しかできなかった。
こんな時は金縛りになるのがセオリーだろ。
瞬きもできる、手も足も動く、喋ろうとすれば情けない声が漏れるだろうと確信できるくらいに体は自由だった。
動かせるけど動いちゃいけない、勝手に動くのを抑えられない体なら、一切動けない金縛りになりたいと切に願った。
何時間だったか数十分だったか
時間を確認する余裕なんてなかったし、目を逸らそうとする意識の変化すらそれの興味を引くんじゃないかと怖かった。
ふと、それの存在感が弱くなった。
このまま移動すると感じて最後まで目を離さずに耐える。
姿も存在感も消えたのはそれからそう長くなかったと思う。
恐怖の余韻からそのまま寝ることなんて出来ず、リビングの灯を煌々とつけて朝まで1人録画アニメ大会で凌いだ。
これのせいで記憶が地続きになって夢オチだと自分に言えなくなったのは痛手だったと少し後悔している。
そいつはこれ以降私の前には出てこない。
最後にそいつは消えたんじゃなくて移動した感じがするので、探し物でもあるんじゃないかと思う。
今もどこか彷徨っているんだろうか。
道すがらで勝手に宿にされた人達には同情する。
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