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夢で会った女性
長編

夢で会った女性

匿名 2015年1月24日
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田舎の故郷から都市に出てはや1年。 勤め先の会社の仕事も人並みにこなせるようになり、同僚との関係もよく、世間話をするほどの仲になった。 近所の自分に対しての評判もそこそこで、「◯◯さん、おはようございます」と気軽に言える関係になっている。 生活にも不自由してはいないが、独り暮らしが続くと寂しくなる。 会社と近所にしか話せる人はいないので、喋り好きな自分にとって夜はきついものだった。 時間が経過し、12月の2日。 急に熱が上がり頭痛もひどく、とても仕事にはいけない状態に陥った。 会社に休暇をもらい、1日のほとんどを寝室のベッドで過ごした。 会話できる相手もいないので退屈し、熱を恨んだまま1日を終えた。 気がつくと、自分は野原に立っていた。 周りには背の低い小さな花がたくさん生い茂っていて、空も雲1つない快晴で、とても綺麗で幻想的だった。 花を見ながら前へ前へと足を進めると、急にドンッと何かにぶつかる。 頭を抱えながら前を見るが何もない。 手で触れてみたら固い感覚はあるので、何かしらに遮られているようだ。 その見えない物の奥を見てみると、ある光景に息を呑んだ。 見えない物の向こうに女性がおり、それも自分が見た女性のなかでも一番と思えるほどの綺麗な女性だった。 女性は前から見て左の方向を向いていて、何かを見ている様にも思えた。 しばらく女性を見ていると、女性は自分の存在に気付いた様で、自分の方を見た。 一瞬ドキッと胸が鳴った。 横顔も綺麗だが、前から見るとより綺麗に見えるので胸の鼓動も大きくなった。 女性はクスッと笑った。 顔が赤くなって鼓動も最高潮に達した。 ジリリリリィン!! 目覚ましの音でハッと目が覚めた。 そこに野原と女性はなく、あるのは見慣れた自室だった。 熱は昨日と違って嘘のようによくなり、感覚も普通の状態にもどっていた。 夢にしては感覚がはっきりとしていた不思議な夢だった。 不思議な夢だった。 今日は休日の日だったので、自分復活記念に街の大きな公園に散歩にいくことにした。 日曜日ということもあって人も多く、親子連れもたくさんいた。 趣味の人間観察をベンチで楽しみ、子供の楽しそうな顔、ジョギングをする老夫婦、何かで盛り上がっている学生、夢に見た女性とよく似た女性、色々な人がいた。 自分は思わず「あれっ?」と声を出しそうになった。 夢に見た女性とよく似た女性がそこにいて、自分の方に近づいて来るからだ。 女性は自分のすぐそばまで来ると、自分に「◯◯◯◯◯は何処でしょうか?」と尋ねてきた。 自分は高まる鼓動を抑え、表情もなるべく普通にし、「◯◯◯を左に曲がった所ですが・・・」と返した。 女性は「私だけでは不安なので連れて行ってくれませんか」と、自分に頼んできた。 ドキッとしながらも頼みを聞きいれ、連れていくことにした。 しかし、話している最中に周りの人が不思議そうに自分を見ていたが、不思議に違和感を覚えなかった。 女性の言っていた目的地に着くと、女性は「ありがとうございます。お礼を返したいので好きなもの買ってあげます」と言ってきた。 赤の他人にお礼をさせてくれと言われても申し訳ないと抵抗はあったが、言葉に甘えて、お菓子を買ってもらうことにした。 それを聞き入れると、女性はお菓子売り場に入り、しばらくするとたくさんのお菓子が入った袋を持って現れた。 まさかこんなにたくさん買ってくれるとは思わなかったので申し訳ない気持ちになったが、女性は「いいんです、いいんです」と言うので、ありがたく貰うことにした。 女性は話を続ける。 「あの、明日お時間あるでしょうか? よければまたあなたに会いたいのですが」と自分に言ってきた。 予想だにしない出来事に自分は驚いたが、「どうしてもどうしても」と言うので根負けし、明日の夜◯時に◯◯◯◯で待ち合わせという形で誘いを受け入れた。 「ありがとうございます。では明日◯◯◯◯で会いましょう」と女性は去り、自分も手を振った。 見れば見るほど綺麗な女性だった。 声も綺麗で表情豊かなので、女性しか見えなかった。 手を振り終えると、自分も帰ることにした。 ここでも自分を不思議そうに、気味悪そうに見ている人が周りにいたが、自分はあまり気にしなかった。 というより、見えなかった。 そしてその女性との付き合いみたいなものが始まった。 話せば話がはずむし、冗談を言ってみると「もー、冗談言わないでよぉ!」と笑顔で返してくる。 ファッションセンスも完璧で、着こなしも文句なかった。 しかも毎日違う服を着ているので、よくあれだけの服を持っているなぁと感心した。 20日の夜、女性と「明日また会おう」と別れ、マンションに戻ると、クリスマスのことを真っ先に考えた。 クリスマスはどこに行こう? プレゼントは何がいいだろうと、色々と考えた。 しかし、最初はあんなに敬語口調だったのに、今はずいぶんくだけた感じになったなとしみじみと思い、過去の事を思い出した。 そういえば、いつもいつも話している時に周りの人やレストランの店員が不思議そうに見ていたな、なんでだろうと考えていると、時計は23時を指していた。 明日も早いので早く寝よう。 仕事のためにも女性のためにも。 夢をみた。 2日に見た夢と同じ夢だ。 そういえばこんな夢を見たなあと懐かしみながら前へ前へ足を運ぶと、また何にぶつかった。 頭を抱えながら前を見ると、奥に女性が見えた。 前に見た夢と同じ女性だった。 女性は自分の方を向くと、「こっちにおいで」と手招きをした。 女性の所まで来ると、女性はこう言った。 「あなたとの付き合いは本当に楽しいよ。 私、あなたのことが気に入ったからずっと傍にいさせてくれないかな?」 と恥ずかし目に言った。 自分は「自分も君の事が好きだからずっといたい」と返し、女性は笑顔で、 「ありがとう。 でも、ずっと傍にいるのは・・・あなたの方!」 と右腕を掴むと、地面に押し倒した。 何があったかわからない自分に、女性は話す。 「まだ理解できないんだ? じゃあ、話していた時に不思議そうにあなたを見ていた人はなんだったのかしらね?」 自分はその時全てを悟った。 女性は自分以外には見えず、不思議そうに見ていたのは、見えない何かに話している変人にしか見えなかったからだ。 それを今日までやっていたのだから、やり場のない恥ずかしさに怒りを覚えた。 表情をきつくしたのを見て、女性は「今更気づいた? あなたが話てるの、すごい滑稽だったよ♪」とくすくす笑った。 反対に自分はますます怒った。 怒りをぶちまけようとしたが、金縛りにあったみたいに身体が動かず、身動きがとれなかった。 「私の物になるんだから動かれると困る」と女性はいい、「そろそろ貰おうかな? あなたの魂」。 女性は笑顔で恐ろしい事を言ってた。 女性の豹変に、怒りから恐怖に変わり、自分は初めて死の恐怖に陥った。 女性は身体を抱えて顔を近づけると、 「さようなら。私に騙されたあなた。 死んだことをあの世で恨む事ね。 もっとも、恨むことすらできないけと」 と言うと、顔を自分の顔に近づけ、口付けをするみたいな形で迫ってくる。 口と口があたる僅か数センチになると、もう駄目だと眼をつむる。 ドンッ! ハッと眼を覚ました。 そこに女性はおらず、あったのは見慣れた自室だった。 自分は恐怖から抜けた後の脱力感で、ずっと落ちた場所から動けずにいた。 落ちた痛みから覚めたのだろうが、あの女性はなんだったのだろう。 そもそもなんで自分に見えて周りは見えなかったのかが一番気になった。 あの女性と手をつないだ時などの感覚はちゃんとあった。 女性は確かに存在はていたはずだ。 次にスマートフォンので一緒に撮った写真をみたが、自分は写っていたが女性は写っていなかった。 女性から貰ったキーホルダーも鍵にはついてなかった。 女性との関係がある物は全て消えていた。 何もかも消えていた。 あの女性が何者なのかずっと考えたが、わからないものはわからなかった。 ただ1つ確信を持てるのは、最初から自分は騙されていたこと。 女性は人間でも幽霊でもない存在であることだった。 あの女性には生気があった。 なければ霊感のない自分でも幽霊だとわかったはずだ。 それに表情も生き生きとしていた。 女性とあった時から2年の月日が過ぎたが、あの女性のことは鮮明に覚えている。

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