
長編
葬儀場での話
匿名 2023年6月22日
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今から10年以上前になります。
母方の祖父が亡くなった時の話です。
生前祖父は昔気質の性格で、若い頃は任侠の世界に出入りをしていました。
そのせいか言動は時に厳しく、私の両親や孫の私に対しても時折叱咤することもあり
私と私の父も正直ちょっと苦手な人でした。
しかし、そんな気丈な祖父も妻である祖母を病気で失い
一気に憔悴していき、ついには身体を患い、病院での治療の末に息を引き取りました。
葬儀を執り行うため、最寄りの葬祭場に手続きをし
当日は親族のみ葬祭場へ泊ることになりました。
祖母の時は自宅葬でしたので、葬儀場に泊るのは今回が初めてでした。
やはりホテルとは違い、葬儀場ということもあって少々抵抗はありましたが
とても大きな祭場で、設備も良くキレイで割と快適に過ごせるようになっていました。
自分たち以外にも利用してる方が何名か居たみたいです。
そしてその夜・・。
軽い夕食を済ませ、宿泊部屋に戻ると布団が
私たち家族4人と祖父の息子である叔父の5人分横一列に敷かれていました。
とくにすることもないので皆それぞれ適当に時間を過ごし
私は入浴しに行くことにしました。
施設内には風呂場が2か所、隣り合わせに設置されており
両方とも電気がついていなかったため、手前のバスルームに入り入浴。
水の音以外なにもしないシーンとした浴室で入浴していると…
隣のバスルームから物音と話し声(のようなもの)が聞こえてきました。
はっきりとは聞き取れませんが、声の感じからして「子供と母の親子?」といった感じ
恐らく別の利用客の方だろうと思い、特に気にせず私はあがることにしました。
5分ほどで身体を拭き服を着て浴室から出た時に、ふと隣の浴室を見ました時に・・・
「・・あれ?・・え?」
と、声を出してしまいました。
隣から浴室を利用していた音が確かに聞こえていたはずなのですが
となりの電気がついていませんでした。
音が聞こえてから私が出てくるまでの時間は10分も立っていなかったはず
その間に出て行ったとは考えにくいですが…
ここは葬儀場、あまり深く考えないようにしよう、そう思い部屋に戻りました。
私自信、心霊やオカルトめいたことは興味はありますが、実際あまり信じてはいませんでした。
思い込みや脳の錯覚、そういう事だろうと思っていたからです。
しかしこの後、その考えが変わる出来事がありました。
部屋に戻り、家族に浴室での出来事は語らず、明日の事を確認し
布団の上で携帯をいじったりして時間をつぶし、そろそろ就寝しようということに。
私の左には父が、右の布団には叔父が寝ることになり
22時時頃に電気を消し、皆就寝しました。
その夜…
家とは違う布団などではあまり寝付けない体質の私ですが
その日は色々あって疲れていたせいか、割とすぐに眠りにつきました。
どのくらい時間が経ったか…
突然…
ズンッ…!
胸のあたりに重みを感じ、圧迫されたような感覚が。
その感覚で意識は覚醒していたと思いますが、なぜか目を開けられない
真っ暗な視界の中、胸に感じる重み、圧迫感
それがじわじわと強さを増していき、違和感だけだったものが苦痛へと変わっていきました。
「・・・・・・っ!・・!?」
声を出そうにも出ず、起き上がろうにも体は動かせない
いわゆる金縛り状態に。
(なんだこれ・・・なんか乗ってる?動けない・・くるしい・・)
何だろう?誰だろう?何が起きてる?やめてくれ
頭の中で思考がぐるぐる巡り、何もできないままその重みは更に力を増していく
(ちょ・・これ・・やばいかも・・)
一体「これ」が何なのか正体もわからず、本気で身の危険を感じた
その時でした…
「もういいだろう・・・」
その声は私の右隣で寝ていた叔父の声でした。
叔父が私に向かって言ったようにも聞こえましたが
何故か私ではなく、私の上にいるであろう「何か」に向かって言ったようにも思えました。
その瞬間…
すっー‥っと私に圧し掛かっていた圧迫感が次第に緩んでいき
やがて「謎の重み」は消え去り、胸の苦しみから解放されました。
私はその安心感からか、そのまま気が遠くなり眠ってしまいました。
翌朝になり
目が覚めると、私はいつも通り起き上がることができ
身体にも何の異変はありませんでした。
昨晩の事を叔父や家族に起こったままの事を伝えましたが
家族は何もなかったと言っており、叔父に関しては
「全然覚えてない」と言っていました。
その後、祖父の葬儀を執り行い
滞りなく式は終わりました。
この一件以来、私自信や周りにそういうった事象は全くありません。
「あれ」が一体なんだったのか
霊的なものを信じていなかったあの時ですら
(もしかしたら祖父が私に何か伝えたかったのか?)
そう思わされるほど強烈な出来事でした。
しかし…なぜ私だったのだろう?
そして、叔父のあの時の言葉
「もういいだろう」
あれは一体どういう意味だったんだろう…
今でもその真意は謎なままです。
後日談:
- 初めまして。初投稿になります。 お読みいただいた方がいらっしゃいましたら感激です。 長文、拙い文章力で申し訳ありません。 もし機会がありましたらまた投稿してみたいと思います。 ありがとうございました。
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