
中編
深夜2時に鳴る電話
匿名 2025年3月10日
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「深夜2時に鳴る電話」
深夜2時。
スマホが震える。不自然なほど無音の部屋に、着信音が響く。
画面には「非通知」。
「……誰だよ、こんな時間に……」
半分寝ぼけながら通話ボタンを押す。
「6日後に迎えに行きます」
女の囁くような声。背筋に冷たいものが走る。
「……は?」
驚いて画面を見ると、通話はすでに切れていた。
履歴を確認するが、どこにも着信の記録はない。
「……夢?」
不気味な違和感を抱えたまま、眠れぬ夜を過ごした。
翌朝、大学へ向かう途中、歩道の真ん中に黒い鳥が立っている。
じっとこちらを見て、まるで何かを言いたげに首をかしげた。
カァァァ……
鳴き声がやけに耳に残る。
スマホを開くと、カレンダーの6日後に「×」印がついていた。
「え……こんなの、入れたっけ……?」
不吉な予感が胸をよぎる。
深夜2時。スマホが鳴る。
震える手で画面を見る。「非通知」。
通話ボタンを押すと、昨日と同じ女の声が囁く。
「5日後に迎えに行きます」
「……誰? 何の冗談?」
声を震わせながら問いかけるが、応答はない。ただ、かすかに水滴が落ちるような音だけが聞こえる。
ポタ…ポタ…ポタ…
ツー…ツー…
通話が切れた。
友人の亮介に相談するが、鼻で笑われる。
「お前、そういうホラー系苦手なくせに、気にしすぎじゃね?」
「だって毎晩電話が……」
「非通知のいたずらだろ。着信拒否しとけば?」
亮介は軽く流すが、不安は消えない。
その日の夜、帰宅途中、道端で知らない女性とすれ違う。
ふと視線を感じ、振り返ると、その女性がじっとこちらを見ていた。
唇だけを動かしている。
「……あと4日」
ゾクリと全身に寒気が走る。
「い、今、何て……?」
女性がいたはずの場所を見ても、そこには誰もいなかった。
深夜2時。電話が鳴る。
「……」
怖くて出たくない。でも、拒否したらもっとヤバい気がする。
通話ボタンを押す。
「……あと3日」
昨日よりもはっきり聞こえる声。まるで楽しんでいるかのような、不気味な抑揚。
「やめろ……誰なんだよ……」
「……すぐ、会えるから」
通話が切れた瞬間、部屋の鏡が「ピシッ」と音を立ててヒビが入る。
「……嘘だろ」
亮介がネットで調べ、「深夜2時に鳴る電話」の都市伝説を発見する。
「やっぱりあった……。『6日後に迎えが来る』っていう話だ」
「迎えって……死ぬってこと?」
「わからん。でも、この話にはもう一つルールがある」
「ルール……?」
亮介はゆっくりと画面を指差した。
『この電話には、絶対に出てはならない』
沈黙が流れる。
「……もう遅い、か」
深夜2時。
電話が鳴る。
「明日、迎えに行きます」
「……お前なんなんだよ……!」
叫ぶが、向こうの気配は変わらない。
「待ってるね」
ヒュー……と、風の音が聞こえた気がした。
部屋の中なのに。
1:59 AM。
スマホを握りしめ、息を潜める。
秒針が動く音が、やけに大きく聞こえる。
1:59 → 2:00
スマホが鳴る。
「……来た」
画面を見なくてもわかる。「非通知」。
「出るな!」亮介が叫ぶ。
だが、スマホは勝手に通話を開始する。
「迎えに来ました」
ゾッとするほど近くで、声が聞こえた。
……スマホの中じゃない。
すぐ、背後で。
振り向いた瞬間、真理の口から悲鳴が漏れる。
真っ黒な何かが、そこにいた。
── (暗転)
翌朝、亮介が真理の部屋を訪れる。
ノックしても応答がない。
ドアを開けると、部屋の中には誰もいない。
ただ、床に転がるスマホだけが震えていた。
「非通知」
怯えながら画面を見つめる亮介のスマホが、同時に震え始める。
深夜2時。
「……まさか」
震える手で通話ボタンを押す。
「6日後に迎えに行きます」
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