
中編
曾祖父のお茶目な初登場
けいすけ 2019年7月27日
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これは母方曾祖父と幼い頃の私達兄妹が体験した不思議な夜の出来事のお話です。
毎年お盆には母の実家近くの公民館で盆踊りが開催されています。
叔父をふくめた青年団のおじちゃんやお兄さん方が出店を出したりして賑やかになります。
因みに、叔父が作る焼きそばと焼き鳥の美味しさは七夕祭りだとかの屋台の味よりはるかに美味しくて優しい味がします。
中学生以下の私達兄妹の胃袋なんて…虜になるには一瞬でした。
「叔父ちゃんの焼き鳥と焼きそばは一番美味しいね」
…私達兄妹の言葉に満面の笑みの叔父と周りのお兄さんやおじちゃんも笑顔になってくれました。
「そうかい。嬉しいね。沢山あるからいっぱい食べな。叔父ちゃんの奢りだ。」
叔父の優しい笑顔は今でも覚えています。
そんな楽しく優しい時間は過ぎましたが…問題発生。
一つ下の弟をおいてけぼりに父と祖母と一つ上の兄が帰宅した。
一緒に帰ろうとした弟のギャン泣きがスタート。
「泣くな。」
「今晩はお母さん達と泊まって行きなさい。あんたは泊まって行くのが初めてだからばあちゃんは嬉しいよ。」
「おいてけぼりをくらい泣くとか…まだまだ子供だね。可愛い奴。」
一番上の兄と母方祖母と従姉に頭を撫でられながら宥められ一応泣き止んだ弟。
まだべそかき面だが…。
「只今…って、K (べそかき弟)どうした?さては父ちゃんに置いてかれたか(笑)そんなに泣くな。どれ、叔父ちゃんとアイス買いに行くか。」
…アイスにつられ元気になる弟。
叔父はアイスを買って来たあとまた公民館へ片付けに戻る 。
私達は仏壇横の広間に布団を敷き寝る。
それぞれ布団を敷きいざ夢の中へ…。
しかし、そこで面白い事が起きました。
天井近くにある扇風機を誰が止めに行くか相談していると…登場したのは叔父。
「おっ、皆お利口に布団さ寝ているな。アイス食べたあとの歯磨きもちゃんとして偉いぞ。今日はK 君もお泊まりだね。待ってたよ。さ、今日は遅いからもう寝なさい。扇風機は見といてやるから。風邪引くからお腹出して寝ちゃ駄目だよ。」
ひょっこり顔を出しながら、優しく微笑み扇風機を止めてくれた。
私達兄妹は返事を返すと寝た。
…しかし。
私はあることに気がついた。
叔父ちゃん…椅子も無くてどうやって天井に吊り下げてある扇風機を止めたのかな?
って…あれ?
叔父ちゃん…浮いてなかった?
そもそも叔父ちゃんいつの間に帰って来たの?
…脳内に謎を浮かべる私の傍ら…叔父が帰宅した。
…大人の男性は帰宅した叔父以外誰もいない。
「なぁ、栞。今帰って来たの叔父ちゃんだよね?」
「そうだね。」
「…さっき扇風機止めたの誰?」
「…誰?」
「でもさ、お兄ちゃん。扇風機止めたの叔父ちゃんにそっくりだったね。」
「叔父ちゃんにそっくりならご先祖様かなぁ。」
「なら怖くないね。」
そんな会話をしていると…。
「夜更かししとる子はいねがー?」
おふざけで脅そうとしたのかナマハゲ口調のさっきの男性が登場。
…顔だけで。
「ハーイ、ごめんなさい。」
「素直で宜しい。」
にこやかに笑う男性をみて私達は眠りにつく。
その日の晩の夢は…。
眠る私達兄妹を優しく見つめながら頭を撫で一言ずつ声をかけていた。
扇風機で部屋の温度調整をしてくれたり布団をかけ直してくれたり…部屋の前の縁側に他のおじいさんやおばあさんと一緒に腰をかけ私達の寝顔をみてニコニコ笑う。
「皆…どの子も可愛いくて良い子ね。何時も見守っているから安心して成長するんだよ。ゆきちゃんにそっくりの優しい子達だね。皆良い子だ。」
…母とそっくりの女性が呟いたところで目が覚めた。
朝ごはんを食べる前に仏壇にご挨拶をした。
仏間の遺影に昨日の夢で見た方々が…。
「それは栞達からみたら曾祖父ちゃんにあたるご先祖様だよ。お母さんや叔父ちゃん達を可愛いがってくれたんだよ。」
「栞のお母さんのお祖父ちゃんとお祖母さんはお嫁に来た私とお母さんと叔父ちゃん達を大切にしてくれたんだよ。曾祖父さんは戦争中に一生懸命野菜やお米を作って、沢山の人を助けたんだよ。意地悪な憲兵さん達を懲らしめて困っている人達を助けた人だよ。優しくて強い人だよ。たまにお茶目で楽しい人だった。…栞のお祖父ちゃんもそんな人だよ。」
まだ8歳の私に祖母は曾祖父母と祖父の思い出話をしてくれた。
「曾祖父ちゃんのお父さんとお母さんもそんな感じの人だよ。」
「お前達皆…そんなご先祖様達の血をひいて優しい子達に育ってくれた。そんな嬉しい事はない。…大人になってもそのままでいてくれな。」
…叔父の笑顔は曾祖父とそっくりだった。
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