
私が高校一年生の冬の夜、友人のKの家へ遊びに行くことになった。彼のアパートは古びた二階建てで、薄暗い階段を上がると、すでに何か不気味な雰囲気が漂っていた。
「俺の部屋は二階だよ」とKが言いながら階段を上っていくと、突然一匹の黒猫が足元をすり抜けていった。私は思わず立ち止まる。
「猫飼ってるの?」と尋ねると、Kは軽く笑って「そう、でもあいつはちょっと変なんだ」と言った。
部屋に入ると、猫はすぐに窓際に座り、外をじっと見つめていた。「何を見てるの?」と聞くと、Kは「知らないけど、いつもこの場所にいる」と言った。
私は窓の外を覗くと、何も見えない闇だけが広がっていた。だが、ふと猫の目の先に何かを感じた。視線を移すと、薄明かりの中に、誰かが立っているのが見えた。それはKのおばあさんの遺影のように思えた。
「Kのおばあさん、いつ亡くなったの?」と聞くと、「俺が中学の時だよ、すごく優しかった」と彼は懐かしむように話した。
その瞬間、猫は視線を外し私を見上げ、まるで『お前も見えてるのか』と言いたげな目をしていた。私は思わず笑いかけると、猫は小さく鳴いた。その声はまるで不気味な静けさを破るように響いた。
「さ、行こうぜ」とKが言い、私も後に続いたが、心の奥にひどい違和感が残った。部屋を出ると、Kの背中越しに黒猫が再び私を見つめていた。その目は、まるで何かを知っているかのように光っていた。ふと、寒気が背筋を走った。彼の言う『ちょっと変な猫』が、実はただの猫ではないのかもしれないと思ったのだ。私が振り返ると、その猫は姿を消していた。静寂が再び私たちを包んだ。もう一度Kを見上げると、彼の表情はどこか不安げだった。私たちの間に流れる空気が、確かに何かを隠しているように感じた。彼の優しい笑顔の裏に潜む不気味さが、私を恐怖に陥れたのだった。これから何が起こるのか、私は全く予想できなかった。夜が深まるにつれ、恐怖が私の心に忍び寄ってきた。何も知らないまま、ただ彼の後をついていくしかなかった。
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