
短編
ベランダ
匿名 2日前
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私の兄は、深夜に帰宅をするので、よく締め出されていました。
そんな兄が家に入る方法は、ベランダをつたい私や次男の窓から侵入するというものでした。
2~3時、ほとんど毎日、ベランダを登り歩くギシギシという深夜には耳障りな嫌な音。コンコンと叩かれるガラス窓。
次男が文句を言いながら開ける音。
そんなある晩、またベランダがギシギシと音を立てました。
しかし、どうやらいつもと様子が違います。練り歩くように端から端まで歩いているのです。時刻は3時前だったと思います。
足音は徐々にスピードを上げ、ベランダを走っているようでした。
どんどん、バタバタ、ぎしぎし、ベランダの床が悲鳴をあげるように騒いでいます。
私は兄ではない、不審者なのではないかと考えました。
でも、こんな夜中にベランダを昇る音も立てず、バレるような行動はしないだろうと考えると不安でいっぱいになりました。
ベランダではしばらく右往左往走る音が聞こえました。
布団に潜り込み、音が止むのを待ちました。
心臓がバクバクしています。
コンコン
私の部屋の窓がノックされました。
何故か私は、恐怖でいっぱいだったにも関わらず、直ぐに雨戸を開けベランダを確認しました。
そこには誰もいませんでした。
と、ほぼ同時にチャイムが鳴りました。
兄が珍しくベランダからでなく、玄関から帰宅したのです。
なぜ兄がその日に限って玄関から帰宅したのか、そして翌日家族に聞いても一切誰もベランダの騒音を耳にしていないのか、未だに不思議です。
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