
最近体験した話なんだが暇だったら最後まで読んでくれ。
俺は普段はフリーでライターをやってる。旅行雑誌やらウェブメディアやらに記事書いて食ってる、まあどこにでもいる感じの物書きだ。ただ副業というか、趣味が高じて猟師の免許も持ってる。罠と銃、両方いける。田舎のほうだと害獣駆除の担い手が減ってて、知り合いのつてでちょくちょく依頼が来る。ギャラも悪くないし、山にこもるのは嫌いじゃないから、暇を見つけては引き受けてた。
今回の話は、そういう依頼のひとつだ。
依頼主は関東のほう、正確な場所はぼかすけど、山に囲まれた集落だった。人口も年々減ってて、今は年寄りばかりが十数世帯残ってるらしい。連絡してきたのは区長をやってる爺さんで、電話越しの声からしてもう七十は超えてる感じだった。
「畑がやられてしょうがねえんだ」
話を聞くと、ここ半年ほど夜な夜な畑が荒らされて、作物がごっそりなくなるという。最初はイノシシかと思って柵を強化したらしいんだけど、柵の下を掘って侵入されるようになった。しかも柵の外側、掘り返した土の量が尋常じゃないと言う。
電話の向こうで爺さんはひとつだけ、妙なことを付け加えた。
「あと、その……夜に畑のほう見ると、たまに、こう、頭数が合わねえ時があってな」
頭数が合わない。意味を聞き返したけど、「気のせいだと思うんだが」とはぐらかされた。俺は軽く見てた。田舎の獣害なんてだいたいそんなもんだ。年寄り特有の大げさな物言いだろうと踏んで、軽い気持ちで山に入った。
現地に着いて、まず畑を見せてもらった。柵の下、たしかに掘られてる。畑をぐるっと囲むみたいにあちこち掘り返されてた。数えるつもりはなかったけど、なんとなく穴の数を目で追ってしまう癖があって、そのとき途中まで数えたところで、区長の爺さんが「もう、数えなくていいから」と急に俺の肩を叩いた。妙に強い口調だった。理由を聞いても、「縁起でもねえから、やめとけ」としか言わない。それ以上は突っ込まなかった。田舎にはこの手の、意味のわからない験担ぎみたいなものがよくある。そのときはそう思ってた。
掘り跡の断面を覗き込むと、土の中に細かい毛のようなものが混ざってるのに気づいた。獣毛にしては妙に長くて、色が薄い。人の毛にも見えたけど、そんなわけないと思って気にしないことにした。
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