
私のクラスには、誰も座りたがらない席がある。
三階の教室、窓際の一番奥――通称「最後の席」。
昔から言い伝えがあった。
そこに座った生徒は、次の日から様子がおかしくなる。
声を出さずに笑う、影を追う、帰宅途中に誰かに呼ばれる……
誰も理由を知らないけれど、みんな避けていた。
ある日、新しく転校してきたのははねちゃん。
明るくて元気な子だったけれど、少し天然で、みんなが避ける「最後の席」に、先生が無理やり座らせた。
その瞬間、教室が妙に静かになった。
誰かが小さく言った。
「……あの席、やばいんだよ」
はねちゃんは笑っていた。
「大丈夫だよ、怖くないって」
最初の異変は翌日だった。
はねちゃんは授業中、誰もいない教室の後ろを何度も振り返っていた。
そして下を向いて、ひそひそと誰かに話しているようだった。
放課後、私は勇気を出して声をかけた。
「はねちゃん、大丈夫?」
はねちゃんは振り返らず、にっこり笑って言った。
「うん、でも後ろの席の子、ずっと私に話しかけてくるの」
私は背筋が凍った。
「誰も座ってないじゃん……」
その日の夜、私は夢を見た。
夜の教室、はねちゃんの席だけがぼんやり光っている。
誰かの影が、はねちゃんの肩に手を置き、ささやく。
「はねちゃん、こっちに来て」
はねちゃんは振り返り、にっこり笑って手を伸ばす。
でも影に触れた瞬間、声も動きも止まった。
私は叫びそうになった。
翌日、はねちゃんは学校に来なかった。
誰も知らない理由で欠席だった。
でも、教室の最後の席だけ、昨日と同じに光っているように見えた。
担任が言った。
「はねちゃんは……少し休むそうです」
でも、昼休みに誰かが声を聞いた。
「はねちゃん……遊ぼうよ」
教室にいた全員が、背筋を凍らせた。
その声は、誰の声でもなかった。
それから、はねちゃんは二度と最後の席に座ることはなかった。
でも、時々教室に行くと、後ろの席からひそひそ声が聞こえる。
「はねちゃん……まだいるよ」
そして、誰かがふと振り返ると、そこには誰もいないはずの席に、ぽつんと置かれた帽子や鞄があるのだった。
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