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長編

井戸の中

匿名 2024年4月25日
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ようになった。  そんな大人達を横目に、俺は内心、何て馬鹿な奴らだと蔑《さげす》んだ。  智がいなくなったお陰か、司と隆史からのイジメも段々と減り始め、その後、中学二年で転校するまでの三年間、俺は比較的平穏な暮らしを送る事ができた。 ────── ────  長いこと走らせ続けてきた車のエンジンを止めると、俺は目の前に建つ年季の入った日本家屋を眺めた。 「相変わらず、ボロいな……」  中学まで自分が暮らしてきた家を見つめてそう呟くと、車から降りて玄関先へと続く道を歩き始める。  ———コツンッ (ん……?)  何かを蹴飛ばしたような感触に、俺は自分の足元へと視線を落とした。 (これは……)  地面に転がっていた靴を拾い上げると、マジマジとそれを見つめる。 (……っ! やっぱり、そうだ!)  この靴は、あの時智に井戸の中へと捨てられたもの。 (何で……これが此処に……?)  やはりあの時、智は井戸になど捨てていなかったのだろうか? そう考えてみるも、それでも今になってこの場所にある事が不思議でならない。 (…………! きっと、あいつらの仕業だ)  俺が帰ってくると知った司か隆史のどちらかが、また俺に嫌がらせをしているに違いない。あの時、やはり井戸になんて捨てずに隠し持っていたのだろう。  十年経っても変わらない関係にウンザリとしながらも、明日の告別式で恥でもかかせてやろうとほくそ笑む。  田舎から出た俺は、母親に楽をさせたい一心で猛勉強をした。その甲斐あって、ストレートで有名大学へと進学すると、そのまま大学を卒業して一流企業へと就職をした。  そう——今の俺は、昔とは違う。  足元の高級な革靴を眺めてフッと鼻で笑うと、俺は手の中にある薄汚れた靴を遠くへと放り投げた。 ◆◆◆  ——翌日。  告別式の受付が開始される中、やっと手の空いた俺は煙草を吸いに外へと出て来た。煙草に火を着けようと、何気なく受付を流し見た——その時。  その懐かしい人物の姿に目が止まり、ピタリと止まった俺の右手。十年経っても記憶の中にいる姿と変わらないその可憐さに、俺は思わず見惚れてしまったのだ。  この田舎で、俺に優しく接してくれた人と言えば、祖父母と母親以外では彼女だけだった。河原美香。そう——彼女は俺の初恋の人。  俺の視線に気付いた彼女は、その場

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