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長編

井戸の中

匿名 2024年4月25日
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」  ———!!?  突然の大声に驚いた俺は、ビクリと肩を揺らすと慌てて後ろを振り返った。 「ペンケース盗んだの、お前だろっ!!!」  そう叫んだ智は、酷く怒った形相を浮かべると俺へと向かって突進してくる。それを既《すんで》の所でかわすと、俺は目の前の智を睨んだ。 「……そんなの知るかよっ!!」 「お前以外に誰がいるんだよっ! この、貧乏人がっ!!」  掴みかかって殴ろうとする智をかわしながらも、必死にその場を転げ回って逃げる。何とか立ち上がって背を向けた、その時──。  背後からグイッと髪を掴まれ、俺はその痛みに思わず顔を歪めた。 (くそ……っ!)  手元に転がっていた石を咄嗟に掴んだ俺は、勢いよく後ろを振り返った。  振り向きざまに、力任せにその手を大きく振り上げる。  ———ゴッ!  鈍い音を響かせると、その衝撃でドサリと後ろへ倒れた智。俺はハァハァと息の上がった呼吸のまま立ち上がると、智からの反撃に備えて身を構えた。 (…………?)  中々起き上がらない智を不思議に思い、ゆっくりと近寄って様子を伺ってみる。 「──っ、!!!?!!!?」  ヘタリとその場に倒れこんだ俺は、ガタガタと震える身体で後ずさった。  目の前で、ピクリとも動かずに仰向けで倒れている智。その目からは尖った鉄が突き出し、後頭部から貫かれている。  草むらで隠れていてよくわからなかったが、所々に錆びれて折れた鉄や木材が落ちている。それに、運悪く刺さったのだ。 (そうだ……っ。これは……、俺のせいじゃない……)  そう自分へ言い聞かせると、呼吸を整えてもう一度智に近付いてみる。草むらに横たわったままピクリとも動かない智を見て、思わず笑みが溢れる。 (……とりあえず、隠さなきゃ)  そう思った俺は、ズルズルと智を引きづって井戸まで移動させると、想像以上に重たい智を懸命に持ち上げた。  やっとの事で井戸の縁に上半身を置くと、ハァハァと息を上げながら額の汗を拭う。俺は休む間も無く智の足を掴み上げると、そのまま勢いよく井戸の中へと落とした。 「…………。さよなら、智……」  空っぽの井戸の中を見つめながら、俺はニヤリと笑って小さく呟いた。  ——その後。  行方不明になった智の捜索は暫くの間続いたが、遺体など出てくる訳もなく、いつしか大人達は神隠しだと噂する

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