
僕には母方の祖母が一人、父方の祖母が一人いる。母の母は田舎に住んでいて、父の母は東京に住んでいる。二人とも温かく、僕が社会人になってもよく遊びに行っていた。
その日は弟の誕生日を祝うために高層マンションで集まった。母の母が田舎から出てきており、豪華な料理が並び、みんなで楽しく過ごしていた。母の母はあまり飲まないが、父の母はワインを片手に楽しそうに談笑している。僕もそれに合わせて少しずつ飲んでいた。
夜も更け、酔いも回った僕はこたつで寝てしまった。気がつくと、深夜の1時頃、何やら騒がしい声が聞こえてきた。「何をしているの!」その声は父の母のものだった。驚いて起き上がり、声のする方へ向かうと、真っ暗な廊下に立つ父の母が見えた。彼女の手には光るナイフが握られていた。
「やれるものならやってみなさい!」母の母が叫んでいた。混乱しながらも、僕は状況を理解しようとしたが、父の母は無言でただ一点を見つめている。緊張が漂う中、二人は睨み合っていた。いったい何が起こっているのか、理解できないまま、僕はただその場に立ち尽くしていた。
すると、父の母が突然、ナイフを持ったまま外に出て行った。追いかけることもできず、僕はただ彼女の背中を見送るしかなかった。その後、静まり返った部屋で、時間だけが過ぎていった。
一時間後、突然ドアのインターホンが鳴った。深夜2時を過ぎているのに、誰が来たのか不安になりながら、覗き穴から外を見ると、警察官が立っていた。「〇〇さんのお宅でしょうか。お母様が警察で保護されています」と言われ、驚きと共に状況を説明された。「『このナイフで孫を刺した』と言われておりまして…」と。
その時、僕の頭の中は混乱の渦に巻き込まれていた。母の母は認知症の兆候もなく、まだ60代だったため、しっかりしていたはずだ。後から警察に連れて行かれた母の母は、僕の後ろを静かについてきたが、まるで別人のように冷静だった。
その事件以降、僕は二人の祖母との関係が段々と疎遠になっていった。父の母がその状況を望んでいたのかもしれないと考えると、今でも不思議な思いが消えない。数年経った今でも、その出来事を思い返すと、背筋が凍るような感覚を覚える。
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