
それは秋の夕方のことだった。友人の誘いで、廃病院の探検に向かうことになった。
集まったのは中学生の男女、合計10名。彼らは好奇心で溢れ、古びた病院の外観を前に興奮していた。
病院は数十年前に閉鎖され、今では周囲を囲む雑草に覆われ、窓は曇り、まるで忘れ去られたかのように静まり返っていた。中でも特に目を引いたのは、病院の裏手にあった朽ちかけた神社。そこは子供たちの間で「悪い神様が住んでいる」と噂されていた。
「ねえ、あの神社、行こうよ。」一人の少女が提案すると、みんなは賛成した。神社に向かう途中、彼女の名前が「市之助」と呼ばれた瞬間、全員の視線が彼女に集中した。
「違うよ、そんな名前の子はいないはずだよ。」男子の一人が言った。
彼女は「でも、私の友達だよ。」とただ言っただけだった。
神社に着くと、周囲は不気味な静寂に包まれていた。古びた鳥居の下をくぐり、小さな本殿に近づく。そこには何もないはずなのに、誰かが中にいるような気配が感じられる。
「誰かいる?」と声をかけてみるが、返事はない。ただ風がざわめくだけだった。
その時、少女が急に立ち止まり、じっと本殿を見つめている。彼女の目は驚愕で見開かれ、まるで何かを見ているかのようだった。
「こっちに来て!」と叫ぶと、みんなは彼女の元に駆け寄る。彼女の指さす先には、かつての病院で見たような、白いトレーナーを着た少年の姿があった。
「市之助くん?」と一人が言うと、少年は振り向いた。彼の顔はぼんやりとした影のようで、どこか異様な雰囲気を漂わせていた。
「逃げろ!」と叫ぶと、みんなは一斉に本殿から飛び出した。だが、逃げても逃げても、その影が追いかけてくる。
やがて、友人の一人がつまずき、転倒してしまった。彼は振り返り、恐怖に満ちた目で影を見た。その時、影は彼に向かって伸びるように手を差し出した。次の瞬間、彼はその場から消えてしまった。
残された仲間たちは、心臓が高鳴り、恐怖で息を呑む。誰もが逃げたが、次々と仲間がいなくなっていく。
最後に残った少女は、恐る恐る振り返る。そこには、彼女の目の前に立つ少年の姿があり、彼女に向かって微笑んでいる。しかし、その顔はすでに人間のものではなかった。
彼女は意を決して逃げ出すが、体が動かない。恐怖で身動きが取れず、ただ目の前で繰り広げられる光景を見つめるしかなかった。
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