
長編
仮母女(かもめ)
匿名 2013年2月4日
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、そう簡単には治らんよ。
これまで亡くなった女性の供養をせねばならん。」
「墓には一応入れておりますが。」
地主が上目遣いで答えると、お坊様はまた首を振って続けた。
「それでは不十分じゃ。
まず小さなカゴを用意しなさい。」
お坊様の言い付けにならって、地主は女中に硯箱くらいの小さなカゴを持ってこさせた。
「このカゴに、人の目と同じ大きさの水晶を2つ入れなさい。
そう、無念にも潰された女たちの目の代わりじゃよ。
それから、その女性たちが生んだ子供たちの、へその緒を当事者たちから集めて同じカゴの中に入れなさい。」
地主は狼狽した。
「そんな大きな水晶…しかも2つも…!!
いくらかかると思ってるんです?
それにへその緒を集めるってのも難儀な仕事ですなー。
なんせへその緒はみんなお客さんに渡してるし、その人たちは、今うちを恨んでおりますからねー。
子供が狂ったのはお前らのせいだーってね。」
お坊様は呆れを通り越して、哀しい目をして言った。
「あなたはこれまで私利私欲のために、罪のない女性の目を潰し、望まないのに無理矢理男に体を汚させ、挙げ句母と子を引き離させてきたのですよ。
その上まだお金のことを心配するとは…救いようがない…。
ここに残った目の見えない女性6人は私が今日から引き取って、お世話させていただきましょう。
あなたが心を入れ替えない限り、この土地の怨念は今後ますます大きくなっていくでしょうな。
まさに言葉どおり…救いようがなくなります。
…今がギリギリ手遅れになる一歩手前ですぞ。」
お坊様は静かに、しかし怒りの色を目にたたえてこう諭した。
「…分かりました。
じゃ、今すぐにでも水晶とへその緒を調達してきますよ。
…で、それをカゴに詰めたらどうするんですか?」
「水晶は亡くなった女性たちの目に代わって、またへその緒は、その方たちが生んだ子供の身代わりとなって、晴れてその姿を拝むことができましょう。
カゴに詰め終わったら、その方々のお墓に、お骨と一緒に埋めて供養しておやりなさい。」
そしてしぶしぶながらも、地主はお坊様の言い付けを守った。
眼球大の水晶2つ(これを買うために土地の半分を売った。)と、狂った子供たちの親に土下座して回収したへその緒。
それらをカゴに入れて仮母女の墓に埋めてやった。
(一説には、カゴの目→カゴメが訛ってカモメとなり、後々になって「仮母女」と当て字が使われた
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- 面白かった!菊島梨瑚
- いや旅館は責任ないでしょ。サングラス
- 3人で事をなすのところで不覚にもそぷ
- 旅館に責任があるわこれ、警察に言っていいレベルだよ。いかん
- 洋子さんどこ?まりりん
- おもろないなガスライティング
- けっこうおもしろかった。りょーた
- 自業自得としか言いようがないな鴉
- 前もこの話見たことあるけど前見た時はもっと長かったような?あー
- なかなか怖かったですが。。。 水晶はそんなに高くありません。vicky