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中編

一緒に行かない?

匿名 2021年11月1日
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アメリカの大学時代の友人Jちゃんの話。 フランス系のクォーターで、肌も白く何とも言えない品があった彼女の事を「やっぱりハーフとかクォーターとかっていいなあ」と私はいつも羨ましく思っていたものです。しかし外見を鼻にもかけず、男にも女にも平気でビシッと(嫌われるのも覚悟で)意見しモテるはずなのにちっとも「媚び感」のない彼女はいつも周りから「変な奴」扱いされていました。 しかし私はJちゃんの親友でした。何故なら英語はまだ完璧にしゃべれない、「右へならえ!」主義の日本育ち故に強い主張などできず、ましてアジア系は肩身が狭かった中で堂々と「だから何よ?」と立ち向かう彼女の性格も好きだったからです。 けれど2年生になった頃、彼女は徐々に変わり始めました。そもそもそこは短大で、本来なら4年制への編入を目指して猛勉強しなくてはいけない時期なのに、彼女は頻繁に授業をさぼり出し、校舎の裏で数人とビールやウイスキーを飲みながら座り込んでいるのを注意されたりするようになったのです。 私も勉強が忙しく専攻が違う事もありなかなか会えなかったのですが、ある日他のアメリカ人の友人から「大麻売ってくれない?ヘロインでもいいから」と彼女が言ってきた、と聞いて私はとても心配になりJちゃんを自分の部屋に呼びました。 顔はちょっとやつれたかな、と思ったけれどドキッとしたのは手首にあった多数のリストカットの跡。最近どうしているのかと問い詰めると彼女は困ったように「んー...バレちゃったか」と言い、「何か最近私ちょっと変なんだよねー」と笑いました。「どうしてこんな事するの?」とリストカットを指摘すると、「これやるとね、気持ちいいんだよ」と返して、「××(私)ちゃんもやる?」とポケットからカミソリを出した時は本当にぞっとしたものです。 私の腕には一つだけ短いリストカットの跡があります。気づく人はまずいませんが、これはその時Jちゃんが「友達のしるしだよっ!」と言って止める間もなく私の腕を切った跡なのです。 どうしよう、親や誰かに相談すべきじゃないだろうか...と悩んでいた時、あの時会ってから2日後に彼女がいなくなったと聞きました。森や海に近い田舎の学校だった為、警察も呼びましたが(アメリカではよくある事もあり)彼女は行方知れずのままになってしまいました。 どこに行ったんだろう...そんな事をしょっちゅう考えていたある日の夜。コツン、コツンとドアをノックする音で私は目が覚めました。「こんな時間に...?」と思って不意にベッドの窓側を見ると、なんとそこにはJちゃんが立っていました。勿論ドアは鍵がかかっているのでぽかんとただ驚いていると、いつもの笑顔で笑いかけていた彼女は 「××(私)ちゃん、一緒に行かない?」と窓の外に見える海を指差して言いました。しかし寮の規則は厳しく、何に影響するかわからなかった私は「行けないよ。今は大事な時期だもん」と咄嗟に答えました。すると 「そっか...わかった」と寂しそうに笑った彼女は、そのまま窓に進みふっと消えてしまったのです。窓は両開きなのに音もせず閉じたまま、しかし外にぼうっと見える彼女の後ろ向きの姿はどんどん小さくなっていきました。 それから2ヶ月後、Jちゃんは海で見つかりました。漁船の人達が浮いている姿を発見したとの話でした。 当時何枚もJちゃんと一緒に撮った写真は今でも持っています。もっと力になれる事があったかもしれない、と思います。でももし最後にJちゃんに会ったあの時、「私も一緒に行く」と答えていたら今私はここにいられたのでしょうか?それとも...。

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