本当にあった怖い話

怖い話の投稿サイト。自由に投稿やコメントができます。

中編

くねくね

匿名 2024年1月27日
怖い 36
怖くない 28
chat_bubble 3
2,252 views
年に一度のお盆にしか訪れる事のない祖母の家に着いた僕は、 早速大はしゃぎで兄と外に遊びに行った。 僕は、爽やかな風を浴びながら、兄と田んぼの周りを駆け回った。 そして、日が登りきり、真昼に差し掛かった頃、ピタリと風が止んだ。 と思ったら、気持ち悪いぐらいの生緩い風が吹いてきた。 僕は、『ただでさえ暑いのに、何でこんな暖かい風が吹いてくるんだよ!』と、 さっきの爽快感を奪われた事で少し機嫌悪そうに言い放った。 すると、兄は、さっきから別な方向を見ている。 その方向には案山子(かかし)がある。 『あの案山子がどうしたの?』と兄に聞くと、兄は『いや、その向こうだ』と言って、ますます目を凝らして見ている。 僕も気になり、田んぼのずっと向こうをジーッと見た。 すると、確かに見える。 何だ…あれは。 遠くからだからよく分からないが、人ぐらいの大きさの白い物体が、くねくねと動いている。 しかも周りには田んぼがあるだけ。 近くに人がいるわけでもない。 僕は一瞬奇妙に感じたが、ひとまずこう解釈した。 『あれ、新種の案山子(かかし)じゃない?きっと! 今まで動く案山子なんか無かったから、農家の人か誰かが考えたんだ! 多分さっきから吹いてる風で動いてるんだよ!』 兄は、僕のズバリ的確な解釈に納得した表情だったが、その表情は一瞬で消えた。 風がピタリと止んだのだ。 しかし例の白い物体は相変わらずくねくねと動いている。 兄は『おい…まだ動いてるぞ…あれは一体何なんだ?』と驚いた口調で言い、 気になってしょうがなかったのか、兄は家に戻り、双眼鏡を持って再び現場にきた。 兄は、少々ワクワクした様子で、『最初俺が見てみるから、お前は少し待ってろよー!』と言い、はりきって双眼鏡を覗いた。 すると、急に兄の顔に変化が生じた。 みるみる真っ青になっていき、冷や汗をだくだく流して、ついには持ってる双眼鏡を落とした。 僕は、兄の変貌ぶりを恐れながらも、兄に聞いてみた。 『何だったの?』 兄はゆっくり答えた。 『わカらナいホうガいイ……』 すでに兄の声では無かった。 兄はそのままヒタヒタと家に戻っていった。 僕は、すぐさま兄を真っ青にしたあの白い物体を見てやろうと、落ちてる双眼鏡を取ろうとしたが、兄の言葉を聞いたせいか、見る勇気が無い。 しかし気になる。 遠くから見たら、ただ白い物体が奇妙にくねくねと動いているだけだ。 少し奇妙だが、それ以上の恐怖感は起こらない。 しかし、兄は…。 よし、見るしかない。 どんな物が兄に恐怖を与えたのか、自分の目で確かめてやる! 僕は、落ちてる双眼鏡を取って覗こうとした。 その時、祖父がすごいあせった様子でこっちに走ってきた。 僕が『どうしたの?』と尋ねる前に、 すごい勢いで祖父が、『あの白い物体を見てはならん!見たのか!お前、その双眼鏡で見たのか!』と迫ってきた。 僕は『いや…まだ…』と少しキョドった感じで答えたら、祖父は『よかった…』と言い、安心した様子でその場に泣き崩れた。 僕は、わけの分からないまま、家に戻された。 帰ると、みんな泣いている。 僕の事で?いや、違う。 よく見ると、兄だけ狂ったように笑いながら、まるであの白い物体のようにくねくね、くねくねと乱舞している。 僕は、その兄の姿に、あの白い物体よりもすごい恐怖感を覚えた。 そして家に帰る日、祖母がこう言った。 『兄はここに置いといた方が暮らしやすいだろう。 あっちだと、狭いし世間の事を考えたら数日も持たん…うちに置いといて、何年か経ってから、田んぼに放してやるのが一番だ…。』 僕はその言葉を聞き、大声で泣き叫んだ。 以前の兄の姿は、もう、無い。 また来年実家に行った時に会ったとしても、それはもう兄ではない。 何でこんな事に…ついこの前まで仲良く遊んでたのに、何で…。 僕は、必死に涙を拭い、車に乗って、実家を離れた。 祖父たちが手を振ってる中で、変わり果てた兄が、一瞬、僕に手を振ったように見えた。 僕は、遠ざかってゆく中、兄の表情を見ようと、双眼鏡で覗いたら、兄は、確かに泣いていた。 表情は笑っていたが、今まで兄が一度も見せなかったような、最初で最後の悲しい笑顔だった。 そして、すぐ曲がり角を曲がったときにもう兄の姿は見えなくなったが、 僕は涙を流しながらずっと双眼鏡を覗き続けた。 『いつか…元に戻るよね…』 そう思って、兄の元の姿を懐かしみながら、緑が一面に広がる田んぼを見晴らしていた。 そして、兄との思い出を回想しながら、ただ双眼鏡を覗いていた。 …その時だった。 見てはいけないと分かっている物を、間近で見てしまったのだ。

この怖い話はどうでしたか?

f X LINE

chat_bubble コメント(3件)

コメントはまだありません。

0/500

お客様の端末情報

IP:::ffff:172.30.1.202

端末:Mozilla/5.0 AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko; compatible; ClaudeBot/1.0; +claudebot@anthropic.com)

※ 不適切な投稿の抑止・対応のために記録される場合があります。

label 話題のタグ

search

数分で鳥肌が立つ恐怖録

読み込み中...

読み応えのある実録ホラー

読み込み中...

ページの奥で待っている長い恐怖

読み込み中...
chat_bubble 3