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お題 中編
いち、に、さん、し……
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いち、に、さん、し……

1ヶ月前
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大学1年の冬、終電を逃しかけて駅まで急いでいた夜の話です。

あれは怖いというより、気持ち悪いほど“惚れられた”感じが残っています。

商店街の裏道。街灯が薄くにじんで、空気だけが湿っていました。

背後から「ねえ」と呼ばれて振り返ると、黒いコートの女の人が立っていた。髪から水が落ちているのに、路面は乾いている。

「駅、どっち?」

案内しようと歩き出した瞬間、足音がないことに気づきました。距離はぴったりなのに、音だけが欠けている。

嫌な予感がしてコンビニの明かりの方へ曲がろうとしたら、耳元で笑われた。

「そっち、やだ」

振り向くと、女の人はもう隣にいた。いつ? と頭が追いつかない。

襟元から覗く肌は紙みたいに白くて薄く、目はガラス玉みたいに光が入ってこない。

「学生?」

「はい…」

「いいね。やわらかい」

言い方が、恋人に触れるみたいでぞっとしました。

そのまま女の人は僕の腕を掴んだ。軽いのに、皮膚の内側を摘ままれる痛み。

「名前、教えて」

「いや…」

断った瞬間、女の人は不機嫌になるどころか、嬉しそうに目を細めました。

「うん、そういうの。好き」

その言い方がいちばん怖かった。拒絶が、燃料みたいに喜びに変換されてる。

女の人は僕の胸元をじっと見て、指先で空中をなぞり始めました。

まるで僕の心臓の位置を撫でるみたいに。

「ねえ、聞いて。わたしね、好きになると数えちゃうの」

「数える?」

「あなたが、わたしのものになるまで。だいじな順番。だいじな回数」

そして小さく数え始めたんです。

「いち、に、さん、し……」

声が妙に甘くて、背中の芯が痺れる。

その数が、僕の鼓動にぴたりと重なっていく。

カン、カン、カン——

踏切の警報音が遠くで鳴ったとき、女の人がすっと口角を上げました。

「音、邪魔」

その瞬間、僕の腕を掴む力が変わった。握る力じゃなくて、引き寄せる力。骨ごと近づけられる感覚。

顔が近い。息が冷たくて、微かに鉄の匂いがする。

「駅より、こっち」

女の人が指差したのは、裏道のさらに奥。街灯の届かない黒い隙間でした。

そこから、誰かの笑い声みたいなものが聞こえた気がした。複数の、低い笑い。

「行かない」って言おうとしたのに、喉が動かない。

代わりに女の人が、僕の耳に口を寄せて囁きました。

「ねえ、好き。好き。……好きって言いながら嫌がるの、すごく可愛い」

ぞっとして、ようやく身体が動いた。

僕は踏切の方へ全力で走りました。

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はじめまして、よろしくお願いします。

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