
さっき、6月の「天井の落ちてこない水の顔」を書き込んだ大学1年の俺だ。
今回は、終業式を目前に控えて校内が夏休みの開放感に包まれていた、7月中旬の話をさせてほしい。
その日の夕方、陸上部の練習を終えた俺は、体育教師に頼まれて一人でプールサイドの片付けを手伝っていた。
夕日に赤く染まった無人のプール。じりじりと照りつける昼間の熱気がまだ残る中、水面には体育の授業で使い残されたカラフルな浮き輪がいくつか静かに浮かんでいた。
早く片付けて帰ろう、そう思っていたんだ。
今回は、プールの底から俺を引きずり込もうとした、高2の7月の怪談をここに詳しく吐き出させてほしい。
プールサイドに転がっていたビート板を回収している時だった。
ふと、耳元で「ジ、ジ……」と、それまでうるさく鳴いていた蝉の声がピタッと止んだ。同時に、生温かった周囲の空気が、ゾクッとするような氷の冷気に変わった。
不審に思って水面に目を向けると、夕日に赤く染まったプールの中で、ある異変に気づいた。
水面に浮かぶカラフルな浮き輪のさらに下、光の届かない深い水底の暗闇の中に、泥のように黒い「別の浮き輪」が不自然に沈んでいる。
何だあれ、と思って目を凝らした瞬間、全身の毛穴が逆立った。
その沈んだ黒い浮き輪の穴の中から、水死体のように真っ白な人間の顔が、じっとこちらを見上げていたんだ。そいつと目が合った瞬間、プールの水底からボコボコボコッ!!!と激しい気泡が湧き上がり、水面が異常に波立ち始めた。
それと同時に、俺の頭の中に直接、冷たい声が響いてきた。
『全部で、いくつある?』
高1の地獄を潜り抜けた経験から、俺の脳裏に最悪のルールが弾け飛んだ。
水面に浮かぶ浮き輪と、底に沈むあの不気味な黒い浮き輪の数を、【絶対に頭の中で数えてはいけない(カウントしようとするだけでもNG)】。
もし無意識にでも「1、2、3……」と数え始めてしまったら、その瞬間に思考を完全にロックされ、そのまま足首を掴まれて水底へ引きずり込まれる。翌朝には、肺を水で満たした溺死体として発見されることになる。
だが、強烈な呪いのせいで、俺の目はどうしても水面の浮き輪を追ってしまい、脳が勝手に数を数えようとし始めた。
「……1、2、3……」
思考が泥のように重くなり、身体が吸い寄せられるようにプールの一歩手前まで進んでしまう。
このままでは数え切って死ぬ。
後日談:
- 俺は水道水で何度も何度も鼻と顔を洗い流しながら、泣きながら家に逃げ帰った。 翌日、あのプールを見に行くと、水は綺麗に澄み切っており、底には何も沈んでいなかった。 【噂すら誰も聞いたことがない、夏の開放感の裏で水底から命を数えにくる未知の呪い】だった。 だけど、あれは絶対にただの錯覚なんかじゃない。 なぜなら、あの怪談があってから大学1年になった今でも、俺は【夏にプールや海に行って、水面に浮き輪や人がたくさん浮かんでいる光景を見るだけで、あの水底の白い顔がフラッシュバックし、頭の中で勝手に数を数えようとする強迫観念に襲われて動けなくなる】んだ。 特に7月になると、あの日無理やり鼻に流し込んだ塩素の嫌な臭いと痛みが鮮明に蘇り、強烈な拒絶反応で息が苦しくなる。 高2の夏、あの学校の怪談は、きらめく夏のプールさえも俺を窒息させるための死の檻へと変えた。 ちなみに、この後に続く8月の「カラダ探し」の地獄については、高1の時の8月ので高2・高3の分までまとめて全部吐き出しちまったから、今回は飛ばすな。 というわけで、夏休みが明けた次の地獄。 次は9月だ
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