
長編
こっちじゃない
匿名 3日前
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つもの2両編成で人も疎らに座るため、いつもの席に座ってさっそく目を閉じる。自慢ではないが、寝てても停止した振動と駅名で起きるという離れ業を習得しているため寝過ごしたことはなかった。それでもその日の電車は違ったように感じた。電車の外が妙に騒がしく、葉や枝が電車に擦れるような音がしたと思う。変だなとは思いつつ目は閉じていた。しかし、電車はゆっくりと停車し、駅名のアナウンスもなくドアが「プシュー」という音を立てて開いた。俺の乗る電車には自動で開く機能なんてなかったはずである。さらに言うと快速電車のため発車してからはS駅とK駅の二駅にしか止まらないのに不自然だと、さすがに俺の駅ではないだろうなと思い目を開く。するとそこには木々が立ち並ぶ質素な場所があった。今まで見たことのない駅の光景に「こんな駅はないはずだ」と内心思っていると、不意に声をかけられた。
「にしゃ、起きてんのかよ?」
方言と訛りのある声に俺は呼び掛けられた。振り返ると古い(昭和の服のようだった)服を来たおばあさんがこっちを向いていた。周りの乗客もみんな寝ているし、こんな時間にどうしておばあさんがいるのだろう、そもそも最初からいたのかという疑問が最初に湧いていたが、質問に答えることにした。(以後、おばあさんの方言は訳す)
「起きています。」
「あんた名前は」
「K(名字)といいます。」
「Kか…Y町のか?」
俺の名字は珍しく、住んでいるところではたくさんいるが他の地域にはほとんどいないためとりあえず名乗っておくとわかってもらえることが多々あった。それにしてもY町とは俺の祖父の実家であった。知り合いなのかと思い答えることにした。
「ええ、祖父の実家です。」
「はーん、そうかそうか、昔世話になったから教えてあげよう。」
そういうと、おばあさんは笑顔でこう言った。
「この汽車にはいろんなのが乗ってるからね、気を付けなさい。あんたはS駅で降りるの?」
S駅とはさきほどのY町がある駅のことである。しかし、俺はその次のK駅で降りるためそう答えると、途端に難しい顔になって真剣そうにこう言った。
「あんた、もし嫌なことがあったらこう言いなさい。<お前はこっちに来ては行けない。お前の帰るとこはI町だ。帰りなさい。帰りなさい。早く帰りなさい。>わかったね?」
なんのことかさっぱりで腑の抜けた返事をすると、お
後日談:
- たまたま見たYouTubeのきさらぎ駅の話を機に、「あ、俺もそういう経験あるわ!」と数年越しに思い出しました。それにしても、100%実話が私の経験上に存在するとなると、今さらながら興奮しますね!それに、あのときのおばあさんに世話をした覚えもないので、きっと祖父や同じ名字の親戚が良いことをしたのかもしれませんね。良いことはしておくものですね。 追伸 それ以来、特段霊を見たり感じたりということはありません。怖い話を子守唄に聞いて寝られるほどですから笑 それはさておき、2021年5月に母校に教育実習に行くことになりました。もう一度現場のトイレや部室を確認してこようと思います。そして、帰りの電車では今度は目を開けて見てみることにしましょう。
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- たくさんの人に読んでもらいありがとうございます。是非、感想も頂けるとありがたいです。小荒井雨