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長編

咒禁

匿名 2025年4月26日
怖い 46
怖くない 15
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※本当は村人は言葉大分訛ってるけど、分かりにくいから標準語でいく。  俺の実家は関東の田舎の村にあるんだけど、俺が高校2年くらいの時に、いきなり爺ちゃんに「出ていけ」って言われて強制的に県外の高校に転校させられたんだ。母親と親父も一緒に追い出された。マジであり得ないと思った。親父は元々村の近くの会社で働いてて、一応役員らしかったからそこそこの地位にいたのに、ある時期に強制的に辞めさせられたんだ。なんでも、爺ちゃんとその会社の社長が知り合いらしくて、辞めさせるように言ったらしい。その社長にとって爺ちゃんは恩人らしくて強く言えなかったのだとか。信じられる?勿論俺も親父も反発したし、理由も聞いたんだけど、普段大人しい爺ちゃんが般若みたいに恐ろしい顔で、 「黙れ!お前らはもうここにいちゃイカン!とっとと出ていけ!!」 なんて言うもんだから全員固まってた。鬼の形相って正にアレのことを言うんだと思う。結局最後まで理由も言わないから納得はしなかったけど、このジジイと一緒に住むのは無理だ、って事で全員出て行くことになった。生まれてずっとその村で育ってきたわけだからそれなりに郷土愛みたいなのはあった。自分で言うのもなんだけど、友達は多い方だったと思う。ただ、都会への憧れみたいなのはあったから、県外に出たくないかって言われれば嘘になるけど。  出て行ってから3年くらい経った頃、俺が大学生活を謳歌していた最中、村にいた頃の友人Fからある知らせを受けた。その知らせを聞いた俺は声に出して驚かずにはいられなかった。同じく村にいた頃の友人M、C、Yが亡くなったというのだ。それを家族に伝えると、村の葬儀に出ようという話になった。うちの両親は友人の親とも仲が良かったのだ。実家の爺ちゃんに葬儀のために村に一時的に帰省することを電話で伝えると、 「葬儀の時間以外は絶対に外に出るな」 って言われた。相変わらず理由は教えない爺ちゃんに、内心"絶対言いつけ破ってやろう"なんて子供みたいに反抗していた。  葬儀の前日、電車に乗って実家に帰ってきた。しばらく都会に住んでいたからか"空気が美味しい"とか、"なんて何もない田舎なんだろう"なんて思ってた。爺ちゃん家に向かう最中、村人があからさまにこちらを見ている。感じる視線は、村中から感じていた。確かに村ってのはよそ者を嫌うなんて話をよく聞くけど、俺たちは元々ここに住んでいたわけだから、違和感しかなかった。  家の前まで着くと、爺ちゃんが家の塀の前で仁王立ちしていて、俺たちを見るなりもの凄い力で腕を掴んで、引きずり込むように家に入れた。  そして開口一番、 「家に着くまで、何もなかったか!?」 って、俺の肩をがっしり掴んで聞いてきた。何もなかったけどめちゃくちゃ視線を感じた、と伝えると爺ちゃんがその場にへたり込んでこう言った。 「いいか。もう一度言うが、葬儀の時間以外は絶対に外に出るな!絶対だ!!」 と、念を押されてしまった。そこで理由を聞くと、 「知らない方がいい」 と言われ、結局教えてくれなかった。なんなんだ一体。  次の日、葬儀の時間になり、俺たちは喪服に着替えて会場に向かった。M、C、Yの合同葬儀らしい。会場に着くと、友人のFが涙で崩れた顔で椅子に座っていた。重苦しい雰囲気の中、俺はFの元へ行き、話しかけた。Fの泣き顔を見て、俺ももらい泣きしてしまった。 「F……俺マジで何も聞いてないんだけど、3人とも何があったの?」 それを聞くと、突然Fが両手で頭を抱えてガタガタ震えだした。そして、三人の遺体が入った棺を震える手で黙って指さした。 「棺が……どうかした?」 「見れば……分かる」 最後、棺の中に花を入れるからその時に見れるはずだ。俺はその時をじっと待っていた。  葬儀が始まったんだが、これが異様に感じた。朝の10時から始まって、既に2時間以上経過しているんだが、お坊さんがお経を読んだ後、神主みたいな人が大幣っていう棒に紙がついたやつを、1時間くらい振り続けてた。まるで、悪霊祓いするかのように。そして村の大人たちは手をこすり合わせてお経を唱えながら必死に祈ってるんだ。顔を見たら、みんな何かに怯えてる感じがするんだよ。隣のジジイなんか、怯えすぎて息が荒くなってた。マジで何が起こってるのか分からなかった。どこのカルト教団だよって思ったけど、後で起こられるのが嫌なので、俺も祈るフリをしながら「なんまいだ~」ってぼそぼそ唱えてた。  そしてようやく、棺に花を入れる時が来た。花を持った瞬間、爺ちゃんにそれを奪われ、 「お前はやらんでいい」 と言われた。よく見たら、花を入れてるのは40過ぎた大人だけだ。若いやつは俺とF含めて誰も花を持っていない。俺は気になって仕方がない疑問を晴らすため、制止する大人達を強引に押しのけ、棺の中の遺体を見た。その瞬間、俺は息を呑んだ。棺の中に入っていたMの遺体は普通じゃなかった。手足の先が完全に腐敗しており、顔に至っては断末魔の叫びをあげた瞬間のような表情で、右目の眼球が外に飛び出していた。しかも、着ているものは死に装束ではなく、爪で引き裂かれたようにボロボロになった普段着と思われる服に、大量のお札が貼ってあったのだ。それはCとYも同じだった。その無残に変わり果てた姿に、悲しみと恐怖で涙が出てくるのと同時に思わず胃の中のものを戻してしまった。 「うっ……げぇぇえええええっ!!!!」  その直後、俺は爺ちゃんに本気でぶん殴られた。マジで頬の骨にひび入ったかと思ったくらい痛かった。 「この馬鹿が!!見るなと言っただろ!!死にたいのか!?」 爺ちゃんの表情は今まで見た中で一番険しかった。だけど、その表情からは“怒り”じゃなく本気の“焦り”を感じたんだ。やっぱり何かあるのか。 「じ、爺ちゃん……一体どうなって…」 殴られた痛みや恐怖、悲しみが交じった震えた声でそう言いかけた途端、 「遺体に触れたのか!?」 肩を強く揺らしながら聞いてくる。 「いや……触ってはないよ」 そういうと、ホッとしたように涙を流して俺を抱きしめた。でもその前にぶん殴られたわけだし、ここまで来たら流石に真相を聞かないと気が済まない。その後、遺体は土葬で土深く埋められたと聞いた。聞いたというのも、俺はあの後爺ちゃんに強制的に家に連れ帰られて、途中で抜け出してしまったからだ。  その日の夜、俺は縁側で月を見てる爺ちゃんに疑問をぶつけた。最初こそはぐらかされたものの、しつこく聞くとようやく折れてくれたようで 「今から話す内容を決して誰にも話すな」 と言ってから、物置から古い書物を取り出して見せてきた。『〇〇村 郷土資料』と書かれていた。爺ちゃんは老眼鏡をかけて本のページを一枚一枚めくっていく。そして、あるページで止まった。そこは、過去に起きた災害を記録しているものだった。 「これ、見てみろ」 そう言われて読んでみた。そこで分かったのは、この村は江戸時代から存在している随分古い村だということ。それから、かなり多くの災害に見舞われていたということ。地震、津波、豪雪、土砂災害。でも、ある時期を境にその記録が途絶えているんだ。 大正13年。 「ここから記録されてないの?」 「されてないんじゃない。そこから災害が一切起きていないんだ」 「どういうこと?ていうか、これがあいつらと何の関係があるんだ?」 「あの子たちはな……この村の"闇"そのものに触れたんだ」 そして、爺ちゃんはゆっくり話し始めた。  この村は元々異常なほど災害が多い地域だったためか、農業も畜産も上手くいかず、生活に困っていたそうだ。大正になり、しばらく経ったある時、それを聞きつけて村に一人の祈祷師がやってきた。後で知ったことだが、その男は黒い噂の絶えない邪教団の熱心な教徒だったそうだ。その男曰く、「私に協力すれば災害をしずめてやる」とのこと。村人たちは藁にもすがる思いで方法を聞いた。  だがその方法は、決して超えてはならない一線を大きく飛び越える、あまりにも非人道的なものだった。以下は、その方法である。 1.子供を磔にし、両手両足をきつく縛る。 2.血流が止まっていき、徐々に腐っていく手足を野犬やカラスに食べさせていき、死んでいく様を母親に無理やり見せる。 3.そうすると当然母親はその行為を行った者、自分を止めた者、そして最後まで助けられなかった自分自身に対し、怨念が溜まる。 4.そして地獄の光景を鮮明に映した母親の右目の眼球を生きたまま取り出す。 5.それを特殊な袋に入れ、それにお札を貼って封じ込める。 6.犠牲となる僧侶を一人、袋と一緒に土に埋めて即身仏とさせ、強すぎる怨念の依代となり、永遠に災害から村を守る人柱とする。 「そして、その人柱に選ばれたのが、当時その宗派で最も優秀だったお方だった」 「…………」 言葉が出てこなかった。 「何それ?つまりその僧侶は、怨念で強まった力を利用して災害から村を守ってるってこと?」 爺ちゃんは悲しげな表情で無言で頷いた。 「あの子たちはそれを見てしまった。ゲンチョウ様のお姿をな」 「ゲンチョウ様って、即身仏になった人のこと?」 「そうだ、ゲンチョウ様は巨大な怨念の入れ物。それに触れることがどれほど危険なことか分かるだろう?」 ゲンチョウ様は村の一番高い山の中にある神社の本殿にあるそう。M、Cは大人が隠していることを調べつくした結果、神社の本殿に何かがあることを突きとめたのだ。ゲンチョウ様がいる限り、災害は決して起きないが、それの中身を見てしまうと、犠牲となった人間のように手足が腐敗し、右目の眼球が飛び出して亡くなる。そしてこれまで溜まっていた災害が一気に起こるという言い伝えまである。実際にM、Cの三人はその姿を見てあの変わり果てた姿になってしまったらしい。見たその日の夜には手足が腐り始め、身体を搔きむしり、Cは吐血までしたそうだ。最後には右目の眼球が飛び出し、 「あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!」 と断末魔の叫びを挙げ、苦しみながら死んでいったそうだ。その時の声は既に彼らのものではなく、子供や大人の女性の声がいくつも重なったような、不気味な声だったらしい。棺の遺体は普通、死に化粧をして死に装束に着替えさせ、綺麗になっているものだが、あの呪いを受けた遺体には決して触れてはいけないらしい。  そして儀式についてだが、10年おきに中身の目を入れ替える必要があるそうだ。そしてその時期が、丁度俺たちが爺ちゃんに家を追い出されたとき、爺ちゃんは俺たちが犠牲になるかもしれないことを恐れて、嫌われること覚悟で無理やり追い出したらしい。結局その時はYが犠牲になったのだとか。俺は罪悪感に圧し潰されそうだった。  俺たちは葬儀の翌日、逃げるように東京へ帰った。一応帰るときに爺ちゃんがお守りと何かの紙を持たせてくれた。この先何もないといいんだけど。  最後に一つ。これ、怖くて誰にも言えなかったんだけど、俺は葬儀の日、棺の中のMの遺体に指先が一瞬触れてしまったんだ。 ……多分、大丈夫だよね?

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