
「あかり、手、つなご?」
「いいよ」
差し出した手を取ると、由紀は嬉しそうにその手を振り始めた。二人で街外れの公園を歩く。
由紀の手はほんのりと冷たかった。
人と手をつなぐ時、握りやすい方と握りにくい方があることを、あかりは知っていた。母親と手をつなぐとき、母はいつもあかりに握りやすい方を渡してくれる。
由紀と手をつなぐ時はいつも握りにくい方だったが、今日は違っていた。自然に握れる。
少し不思議に思ったが、あかりの手をまるでおもちゃのように振る由紀を見て、いつも通りの由紀だと微笑んだ。
「どうしたの?」
「いや、なんでも。もう暗くなってきたね」
「秋だからね。夕方は早いよ」
由紀が楽しそうに言うと、あかりも続けて言った。
「落ち葉の季節だね」
由紀は笑った。
昨日から学校も秋休みに入った。
待ちに待った秋休み。でも昨日は、家で終わらない宿題に追われて一日が終わってしまった。
由紀が遊びに来なかったからだ。
町の小学校で友達が少ない上に、あかりと由紀は小さい頃から仲が良かった。
特に約束がなくても来ると思っていたが、何か用事があったのか、もどかしい気持ちでいるうちに暗くなってしまった。
あかりの方から誘いに行くのも良かったのだが、由紀から誘われなければ宿題を放り出す理由がなかった。
「秋と言えば」
口にしてみたものの、その先が思いつかなかった。
「秋と言えば?」
聞き返されてから考える。
「……紅葉?」
「それも良いけど」
何が面白いのか、二人して笑った。
「秋と言えば」
今度は由紀が言う。
「秋と言えば?」
「怪談!」
おお~、確かに、と同意しながらちらりと由紀を見る。
ひょっとして、昨日遊びに来なかったのはそのせいだろうか?
「では、ここで一つ怪談を」
由紀が手を口元に持ってきて、わざとらしく咳払いをした。
なるほど。由紀は昨日怪談にはまっていたのだ、とあかりは思った。
きっと、兄の影響だろう。
そして、怖い話をあかりに聞かせようと覚えてきた。
今日一日、どのタイミングで切り出そうかと機を伺っていたのに違いない。そう言えば思い当たる瞬間があった。
あかりは思わず頬を隠すように公園のベンチに顔を向けた。
「『かくれんぼ』っていうお化けの話なんだけど……知ってる?」
「かくれんぼ?」
あかりはまだ由紀の方を向けずにいた。
「そう。『かくれんぼ』っていうお化け」
どうにか普通の顔に戻して、由紀を見て首を振る。
「聞いたことない」
答えると由紀はにやりと笑う。
後日談:
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