
年末の寒い夜、私の実家に親戚が集まりました。 みんなで温かい飲み物を飲みながら、子どもたちはカラフルなLEDライトを持ち寄り、暗い部屋で遊ぶことになりました。 その時、私の母はソファに深く腰を下ろし、子どもたちの様子を見守っていました。 しばらくすると、母の声が暗い部屋の隅から聞こえました。 独り言のように、壁に向かって何かを呟いているのです。 「……ちょっと、光が入るから窓を閉めて」 「……気持ち悪いから、こっち見ないで」 不機嫌そうな、誰かに話しかけているような口調。 子どもたちは不思議そうに母を見つめました。 やがて母は、硬い声で呟きました。 「……間違えた」 そして静かに、何があったのか話し始めました。 ━━━ 遊んでいる子どもたちを眺めていた母は、閉めたはずの窓がわずかに10センチほど開いているのに気づいたそうです。 誰が開けたのだろうと窓を閉めようとした時──その隙間から、誰かが覗き込んでいるのを見つけたのです。 その顔は、父の顔でした。 窓の向こうは、親戚たちが楽しく談笑している部屋です。 その明かりを背に、父の顔は逆光に少しぼやけていましたが、にやにやと笑っているのがはっきり分かったそうです。 光が入ってしまうと子どもたちの遊びの邪魔になると思った母は、父に文句を言っていたのだそうです。 その瞬間、窓がサッと閉まりました。 その時、母はようやく気づいたのです──あれは父じゃない、と。 「声も顔も父だったの……でもね、位置が全てずれてるのよ。目の高さは左右で違うし、口も右にずれてて、福笑いのようだった。……なんでそんな変な顔なのに、一瞬本物の父だと思ったんだろう」 母が不思議そうに話すと、部屋は静まり返りました。 LEDライトの光だけで照らされた暗い部屋が、急に恐ろしく感じられました。 私たち子どもはすっかり怯え、遊びを中断しようと恐る恐る窓を開けると──向こうでは親戚たちが楽しく過ごしていました。 酒に弱い父は、ソファでぐっすり眠っていました。 ━━━ ちなみに、母は霊感が強いタイプで、母方の親戚も見える人が多いです。 私自身は感じませんが、母や妹、弟は時々「見てしまう」ことがあるそうです。 そして母たちが共通して体験している現象があります。 それは、忙しい時や何かに集中している時に起こるのだそうです。 例えば母が料理をしている時、妹が絵を描いている時、弟が読書をしている時──そんな少し手を離せないタイミング。 「おーい」と話しかける声が背後から聞こえるそうです。 その声は父にそっくりなのです。 「さっきから話しかけてるだろ。なあ、ちょっとこっち見て」 「なあってば」 今は手が離せないから後にして、と伝えても、何度も何度も話しかけてくる父の声。 もうしつこいな、そんなに緊急の用事なのかと振り返ると──そこには誰もいないのです。 ━━━ この現象は今でも続いています。 台所で母が「はいはい、後でねー」と独り言を言った後、振り返ってはため息をつく。 不思議そうに見ていた私に、そばで同じ光景を見ていた妹がそっと耳打ちしました。 「今の、お父さんじゃない方だったよ」 笑いながら、まるで「また間違えちゃったね」とでも言うみたいに。 その無邪気さに、私は背筋が冷えました。 ━━━ 先日のことです。夜中に目が覚めて台所に行くと、父も起きていました。 暑さで寝苦しくて、アイスを取りにきたようでした。 たまたま今度見に行く映画の話になって、10分くらいでしょうか、父とそのまま立ち話をしていました。 会話が途切れて、私が「じゃあ、おやすみ」と声をかけて部屋に戻ろうとした時── 「なあ」 父に呼び止められました。 振り返ると、なぜかにやにや笑ってこう言いました。 「……分からなかった?」
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