
冬の夜、私は出張で訪れた高層マンションの一室に一人で滞在していた。外は吹雪で、窓の外は真っ白な雪景色が広がっていた。部屋の中は暖かいが、なんとなく不安な気持ちが消えなかった。
その晩、ソファに座りながらテレビを見ていると、ふと目の端に何かが動くのを感じた。視線を向けると、窓ガラスに薄い影が映っているのに気づいた。雪のせいで外は真っ白なのに、そこにはっきりとした影があった。
「誰か外にいるのか……?」
私は思わず立ち上がり、窓に近づいた。だが、外は誰も通っていない。影は一瞬、私の視線を奪った。明らかに人間の形をしていたが、まるで形が崩れているように見える。腕が長く、四肢が不自然に曲がっていた。
「気のせいだよな……」
そう自分に言い聞かせ、再びソファに戻ったが、心が落ち着かない。何度も視線が窓に戻る。その影は、こちらを見つめているような気がした。
次第に、その影の形が変わっていくのを感じた。まるで、腕の下から白い触手のようなものが生えてきている。恐怖が私を襲い、叫び声が喉元まで来たが、声を出せずに震えた。
「開けちゃダメだ……」
その瞬間、思考が止まった。何かが私の心の中で叫んでいた。無意識に、私はその場から離れ、布団をかぶり込んだ。心臓がバクバクと音を立てる中、ただただ静まり返った部屋の中で、影が消えるのを待った。
しばらくして、雪の音に混ざって、エレベーターの音が聞こえた。誰か帰ってきたのだろう。安心感が広がり、布団をかぶったまま、私は思い切って声をかけた。
「おかえり!部屋の前に変なものいなかった?」
返事はなかった。聞こえたのは、エレベーターの扉が開く音と、静かな足音だけ。私は布団から顔を出し、周囲を見回した。だが、いつの間にか影は消えていた。
その晩の出来事を友人に話しても、笑われるだけだった。私が見たものは夢だと言われた。だが、夢ではなかった。あの不気味な影が、確かに私の目の前に立っていたのだ。今でもあの窓の前に立つ時、何かが映っているのではないかと不安になる。
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