
長編
少年のおばあちゃん
kuna 2016年3月8日
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みなさんは知っているでしょうか?
怪談の代表的な話ですので、知っている方が多いと思います。
この話にも、いろんな話がありますね。
私が聞いた話は、こんな話です。
少し結末が違う話ですが
―――その少年は、臨海学校にやってきていました。
臨海学校は、小学校や中学校では定番ですね。
朝、小学校を出発して、川で遊んだり、お弁当を食べたり、虫取りをしたり。
子供らしいですね。
そして、夜の楽しみといえば、枕投げや………怪談です。
その少年達も、枕投げをしたりしていました。
まぁ、女子はどちらかといえば恋バナですよね。
男の子はいくつになってもやんちゃですから。
「さて、そろそろ怪談といこうか」
一人の男の子が言いました。
「賛成、賛成」
そりゃ、賛成ですよね、男の子ですもん。
その少年は比較的大人しい性格で、怪談もあまり好きではなかったので、隅で寝ることにしました。
―――どれくらい時間が経ったでしょう。
ふと、男の子はトイレに行きたくなりました。
時刻はもう真夜中で、みんなのうるさいくらいのいびきが聞こえてきます。
少年は、「こんな時間に起こすのは申し訳ない」と思い、一人でトイレに向かいました。
用を足し終わって外に出て部屋へ戻ろうとするけど、いくら探しても部屋へ辿りつけません。
怖くなった少年は、死物狂いで探し続けました。
ふと、ひとつの小さなドアを見つけました。
どうやら外に繋がっているようです。
一刻も早く部屋に戻りたかった少年は、とりあえず出てみることにしました。
―――外は、真っ暗でした。
ただただ方向も分からず歩き回っていると、ぼんやりと小さな明かりを見つけました。
(誰かいる!)
少年はそう思い、明かりの方へと歩き出しました。
だんだんはっきりするけど明かりに照らされたのは、一人のおばあさんの後ろ姿でした。
髪を振り乱し、白髪が混じっていて、とても人間とは思えないくらい足や手が細い。
そんな異様な光景を目にして、少年は驚きと恐怖で立ちすくんでしまいました。
そう、金縛りにあったように動けなったのです。
すると、おばあさんは地の底から響いてくるような低い声で、こう言い始めました。
「いちまーい……」
少年はビクッとなりました。
「にーまい……さーんまい……よーんまい……」声はだんだんと大きくなってきます。
その瞬間、ふっと金縛りがとけ、少年は無我夢中で走りだしました。
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
少年の存在に気づいて、老婆は振り返りました。
「みぃーたぁーなぁー!!!」
後ろからものすごい早さで老婆は追いかけてきます。
少年は、ずっと無我夢中で走り続けました。
前だけを見て―――…。
―――どれくらい走ったんでしょう、目の前に、建物が見えました。
それは、自分達が泊っていた建物でした。
少年は建物に飛び込み、部屋を探し走り続けました。
すると、見慣れたドアが見えて、そこが部屋なんだとわかりました。
少年はすぐさま部屋に入り、布団に潜り込みました。
ドクン、ドクン、と、鼓動が高鳴っています。
すると、スーッ…と扉が開き、さっきの老婆が入ってきました。
老婆は、近くにいたこの布団に手を入れながらこう言いました。
「寝ている子は足があったかい〜…」
そこで初めて少年は気づきました。
自分の足は、とてつもなく冷たいのです。
「起きていた子は足がつめたい〜…」
その間も老婆は、次々と子供の足を触っていきます。
「この子もちがーう…」
なんとか足を暖めようとして、足を手でこすりました。
―――とうとう、自分に、回ってきました。
ドクン…ドクン…ドクン…
老婆が自分の足に手を当てます。
「この子もちがーう………」
少年は、ほっと胸をなでおろしました。
そこで、老婆の足音がぴたりと止まりました。
「………………………」
老婆は、自分の手を見つめています。
その手には、土がついていました。
そうです。
少年は、裸足のまま外を走っていたため、足に土がついていたのです。
老婆がゆっくりと振り返りました。
そして、少年のところまで戻ってきます。
「!!!」
少年は、殺される事覚悟で目を瞑りましました。
でも、老婆は少年の手を取り言いました。
「お前は正直な子だね。急いで足をあったかくしたんだろうけど、土がついてちゃ意味ないじゃないか」
「え…おばあさん…?」
おばあさんはなぜか悲しそうな顔をしていました。
「この世に…未練があったんだけどねぇ。お前のおかげて成仏できそうだよ」
「え…?待っておばあさん!どうして…どうして死んじゃったの?」
「……息子に、殺されたのさ。お前にそっくりな顔をしていてね。保険金目当てだったみたいだね」
「おばあさん………」
「でも、おまえはそんな子じゃないって分かったよ。いい大人になりなよ。天国から応援してるから」
すると、少年はそれが自分のおばあちゃんだということに気づいた。
少年が生まれた時には亡くなっていたが、お父さんにおばあちゃんの事を聞くと暴力をふるってきた。
まるで、なにかを隠しているかのように……
(おばあちゃんが死んじゃったのは、お父さんのせいだったんだ…)
「おばあちゃん、僕、お母さんに真実を言うよ。お父さんがいい人になるように……。おばあちゃんも、それを天国から見てて」
「………。お前は、優しい子に育ったね。さっきは怖い思いをさせてごめんね。これからも、いい………大人に……そ……だつ…んだよ………」
そう言って、老婆は光に包まれて消えていった。
(おばあちゃん、僕、たくましくて、強い大人になるよ。もう、誰も悲しまなくてすむように……おばあちゃんのためにも……)
そう思って強く握りしめた少年の手には、あたたかいぬくもりがまだ残っていた。
少年は笑顔で窓を開け、空を見上げた。
そこから、おばあちゃんが手を振ってるような気がして、空に向かって手を振り返した。
あの空で、おばあちゃんが笑顔で見守ってくれているのを信じて―――…。
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