
大学の冬休み、私たちのサークルは温泉宿に行くことになった。友達の推薦で選んだその宿は、霧深い山の中に位置していて、少し不気味な雰囲気が漂っていた。
宿に着いた私たちは、歓声を上げながら、お風呂に入ることを楽しみにしていた。部屋に案内されると、他のサークルのメンバーとは離れた部屋に通されたことに気づいた。広い部屋は、私たち十人には少し余裕がありすぎると感じた。
夜が更け、皆で集まって布団に横になり、談笑を始めた。私は友達と向かい合って話していると、襖の隙間から漏れる明かりが目に入ってきた。その瞬間、目を引いたのは、薄暗い中に立つ男の影だった。
驚いて言葉を止めた私。最初は、サークルの顧問が見回りに来たのかと思った。影の正体が顧問だと考えつつ、彼のメガネのフレームが光っているのを見た。だが、彼は何も言わず、ただこちらを見つめていた。私たちの顔が不安に包まれる。
その影は、何も言わずに襖の向こうへと消えていった。私の隣にいた友人も同じ影を見ていたが、二人とも言葉を飲み込んでいた。すると、別の友人が急に起き上がり、「トイレに行く」と言って、影の方に歩いて行った。「やめて!」と心の中で叫んだが、彼女は何事もなく戻ってきた。
その後、私たちは「もしかしてあの影は…」と口にすることを躊躇したが、最終的に確認した。「あの影のところには、誰もいなかったよね?」と。皆が頷く中、その瞬間、宿全体が不気味な静けさに包まれた。私たちの心に恐怖が広がった。影の正体が何であったのか、分からないまま夜は更けていった。私たちは影の存在を忘れることができなかった。夜が明けた時、宿のスタッフに尋ねると、彼らは笑いながら答えた。「ああ、あの部屋には時々、昔の宿泊者の影が見えることがあるんです。」それを聞いた瞬間、私たちは背筋が凍る思いをした。影が見えたのは単なる偶然ではなかったのだ。私たちはその部屋から逃げ出したくなった。
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