
これは私が東京の高層マンションに住んでいた頃の話です。都会の喧騒の中、仕事に追われる日々を送っていた私は、友人と遊ぶ余裕もないほどに忙しい毎日を過ごしていました。
そんなある日、部屋に異変が起きました。部屋の中に漂う甘ったるい匂い。しかし、その匂いは決して心地よいものではなく、むしろ生臭く、鼻を刺すような不快なものでした。
最初は、掃除を怠っていた自分のせいだと思い、必死で部屋を片付けました。クローゼットの奥から古い食品を処分し、排水口も念入りに掃除しました。それでも、匂いは消えませんでした。
次第にその匂いは強くなり、私の精神を蝕んでいくようでした。友人の家に泊まり込むことにしましたが、数日後、彼女も私を追い出すことになりました。仕方なく帰宅すると、匂いはさらに悪化していました。まるで生き物がいるかのように、鼻をつく刺激に耐えられず、窓を開け放つことにしました。
その晩、冬の冷たい風に当たりながら、私はベッドに横になりました。ふと、耳に異音が入ってきました。何かが窓に当たる音です。
「まさか、泥棒?!」と焦りましたが、体は動かず、夢の中にいるような感覚でした。不思議と部屋は明るく、月明かりが差し込んでいます。その瞬間、窓の向こうに黒い影が見えました。まるで黒い雲のような、不気味な形をしていました。
影は窓を通り抜け、部屋に入ってきます。その影の中心には、人間の顔が浮かんでいました。私と目が合うと、その影はじわじわと近づいてきました。恐怖で動けない私は、ただその様子を見つめ続けました。影は私の頭の上でうごめき、口をパクパクと動かしています。私は恐怖に震え、声も出せませんでした。
しばらくすると、影は私の興味を失ったかのように、また窓から外へと消えていきました。
翌日、隣の部屋に住むOLが私のところに来て、異臭について相談してきました。「この匂い、あなたの部屋からですか?」と不安そうな顔で言います。私は驚きました。「まさか、自分だけではなかったのか。」彼女と一緒に不動産屋へ行くことにしました。
不動産屋は、色を失いながら「隣の住人が昨年、亡くなっていたことを知っていますか?」と告げました。隣の部屋には、半年以上も放置された遺体があったのです。その瞬間、私は数日前に見た黒い影の正体を理解しました。
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