本当にあった怖い話

怖い話の投稿サイト。自由に投稿やコメントができます。

新着 長編
冷たい手の記憶
冷たい手の記憶
新着 長編

冷たい手の記憶

8時間前
怖い 1
怖くない 1
chat_bubble 0
78 views

宿の扉を開けると、冷たい風が吹き込んできた。火照った身体を一瞬で冷却していく。

あの冬の日を思い出す。

見上げれば、白い雪雲が空を覆い、視線を下げれば、雪に埋もれた山道が続いている。

懐かしい田舎の景色。

雪の匂いと、冷たい空気。

耳に残る雪の音。

口の中によみがえる、温かいココアの甘さ。

つないだ手と手。

僕と妹。そして、あの冬は――、

§

§

§

宿の祖父が亡くなった。

東京暮らしの僕は、夜行バスに乗り込み、北の町へと向かった。

祖父の住んでいた宿は、駅からさらにバスと徒歩を乗り継いで、山の奥にある。

昼過ぎに東京を発ち、着いた頃には冬の陽も沈みかけていた。

遠く近く、静寂が支配する。

木々が雪に覆われた景色。

ここはさして変わっていない。

あの日から。

「翔(しょう)ちゃん、久しぶりね。お仕事忙しかったでしょう?」

伯母――僕の母の姉は、テーブルの上に温かいココアの入ったマグを置きながら言った。

いつも元気な伯母は、僕の母に似ている。

「いいんです、祖父にはお世話になりましたから。

それより、さみしくないですか?」

伯母は微笑む。

「なんともないよ。祖父も大往生だったし、皆、笑顔で見送ったよ。」

そう言って、伯母は何かを取り出した。

差し出されたのは、古い写生帳だった。

「これは……」

手に取り、ページをめくる。

幼い頃の絵と文字。

どれも見覚えがあった。

当然だ。

これは、自分自身が描いたものだったのだから。

「――懐かしいですね」

「でしょ? 祖父の部屋を片付けてたら出てきたの。」

§

§

子供の頃、毎年冬になると、僕たちは母方の実家に帰省していた。

同じ学校の友達もいない。

遊び場もない。

普段の生活とはかけ離れた環境だったが、僕は毎年、ここを訪れるのを楽しみにしていた。

山に行けば、雪遊びができる。

宿の周りでは、雪だるまやかまくらを作れる。

夜になれば、祖父に連れられ、近くの神社に行った。

そして、冬の間に行われる伝統的なお祭り――。

『翔ちゃんの手は、冷たいね』

『……あなたの手は、暖かいね』

§

§

「――翔ちゃん、どうしたの?」

伯母が心配そうに僕の顔を覗き込んでいる。

「――あ、いや。色々と思い出していて。」

「懐かしいでしょう?毎年来るたびに、このノートに続きを書いてたからね。」

「そうだね、これ、一晩借りていい?」

今夜、じっくり読みたい。

「いいよ、でも処分するつもりなら、仏壇に供えておくからね。」

§

§

今回の滞在の目的は、祖父の家への挨拶だけだ。

1 / 3

後日談:

後日談はまだありません。

アバター 001_001

はじめまして、よろしくお願いします。

投稿数 5
怖い評価 106
閲覧数 6.4k

この怖い話はどうでしたか?

f X LINE

chat_bubble コメント(0件)

コメントはまだありません。

0/500

利用規約をよく読んで、同意の上でコメントしてください。

・連続コメントは禁止しておりますが、新規登録・ログインすることで、連続コメントも可能となります。

お客様の端末情報

IP:::ffff:172.30.1.72

端末:Mozilla/5.0 AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko; compatible; ClaudeBot/1.0; +claudebot@anthropic.com)

※ 不適切な投稿の抑止・対応のために記録される場合があります。

label 話題のタグ

search

【参加型】投稿企画・タイアップ企画

  • 心霊スポット
  • 意味怖
  • 禍禍女

一息で読める短い怪談

読み込み中...

じっくり染み込む中編怪談

読み込み中...

深夜に読むと戻れなくなる長編怪談

読み込み中...