
桐田は春の穏やかな夜、友人たちとの飲み会を終えて帰宅する途中だった。普段はあまり飲まない彼も、友人たちと久しぶりに再会し、楽しいひとときを過ごしたため、少し気分が高揚していた。駅からの帰り道、周囲の静けさが心地よく感じられた。
しかし、彼が通り過ぎる郊外の住宅街では、夜の静寂の中に異様な雰囲気が漂っていた。公園の近くで、ふと目に留まったのは、ベビーカーを押す若い夫婦だった。春の夜風に吹かれながら、誰もいない公園を散歩する姿は、一見すると微笑ましい光景だった。
しかし、桐田の好奇心から、すれ違いざまにベビーカーの中をちらりと覗き込んでしまった。その瞬間、彼の心臓は凍りついた。ベビーカーの中には、何か異様なものが詰め込まれていた。干からびた何か、まるで動物のような形をしている。
驚きと恐怖で息を呑み、桐田はその場を急ぎ足で離れた。すると、後ろで「ガン」という大きな音が響いた。思わず振り返ると、女がベビーカーの中身を掴み、無造作に歩道のガードレールに投げつけていた。男は無表情でそれを見つめているだけだった。桐田は恐怖に駆られ、全速力でその場から逃げ出した。
翌朝、彼はいつも通り駅へ向かう道すがら、昨夜の出来事を思い出しながら公園の近くを通り過ぎた。すると、ガードレールのあたりには、動物の毛が大量に散乱していた。桐田は息を呑み、再びその光景を思い出した。あの夫婦は一体、何をしていたのか。彼の心に恐怖が再び蘇る。何かが、彼の見えないところで続いているのかもしれない。彼はその場を後にしながら、背後に誰かの視線を感じていた。恐怖心が胸を締め付ける。きっと、あの夫婦は今も、どこかで彼を見ているのだ。
桐田は急いでその場を離れた。心の奥底に、何かが巣食っている気がした。恐怖は、彼の心の中に静かに広がっていた。彼の目の前には、何もないはずの夜の公園が広がっている。だが、その暗闇の中には、彼には見えない何かが潜んでいるのだ。
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