
僕がしばらく住んでいた古いマンションでの出来事です。
30代になった僕は、安定した職に就くために必死でしたが、生活は相変わらず落ち着かず、引っ越しを決意しました。周囲の友人たちはそれぞれの生活を築いている中、僕はただの独身男。そんな孤独感を抱えながら、引っ越し先を探すことにしました。
春のある日、賃貸情報を検索していると、驚くほど安い物件を見つけました。古いマンションの一室で、家賃はわずか2万円。敷金・礼金も不要という条件に惹かれ、すぐに不動産会社に連絡しました。
電話に出た女性は、「いい物件ですが、少し訳ありです」と言いました。どうやら、数年前にこの部屋で一人の女性が亡くなったらしいのです。自殺や事故ではなく、孤独死とのことでした。
それでも、僕は条件の良さに目を向け、結局その部屋に決めました。入居して数日後、夜になると壁の向こうから「どん、どん」と音が聞こえてくるようになりました。最初は子供の声かと思っていましたが、どうもそれは違うようでした。女性の声も聞こえ、時折泣き声や怒鳴り声が混じっていました。
ある晩、隣の部屋から出てきた母親と息子に出会いました。彼女はにこやかに「うち、うるさくてごめんなさいね」と言いました。しかし、彼女が入った部屋は僕の部屋の向かい側でした。今思えば、あの悲鳴のような声はどこから聞こえていたのか、考えなければなりませんでした。
さらに調べると、亡くなった女性はこの洋室で発見されたと知りました。孤独に過ごしていた彼女は、部屋の中で何度も悲鳴を上げていたのかもしれません。僕は、彼女の声がずっとこのマンションに残っているのではないかと考え、恐怖を感じるようになりました。
そして、引っ越してから2年後、ついに正社員の職を得て、あのマンションを出ることにしました。退去の際、ふと玄関を振り返ると、どこか不気味な静けさが漂っていました。新しい住人は決まらず、しばらく空室のままのようでした。あの女性の声は、今もなお、この場所に響いているのかもしれません。
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