
ある晩、友人と肝試しに行くことになった。
目的地は、町外れにある古びた廃墟だ。噂では、そこには不気味な絵が壁に描かれているという。
「本当に行くのか?」友人が不安そうに聞く。
「大丈夫だよ。ちょっと見てくるだけさ。」
そう言って、僕たちは廃墟に足を踏み入れた。中はひんやりとしていて、かすかな湿気が漂っていた。
薄暗い廊下を進むと、ふと目に入ったのは壁に描かれた絵だった。そこには、女性の顔が描かれている。
僕はその絵に引き寄せられるように近づいていった。その顔は、とても悲しそうだった。
「見てみて、すごくリアルだ!」友人が叫ぶ。
僕はその言葉に反応し、絵をよく観察した。すると、女性の瞳がまるでこちらを見ているかのように感じた。
「おい、なんか変じゃないか?」友人が言う。
その瞬間、僕は背筋が凍るのを感じた。絵の中の女性の顔が、徐々に変わっていくのを見たからだ。
もともと悲しそうだった表情が、次第に恐怖に満ちたものへと変わっていく。
その口からは、黒い液体が流れ出し、床に滴り落ちる。
「やばい、出よう!」友人が叫ぶ。
しかし、足が動かない。僕はその絵の中の女性が、かつての恋人の顔に似ていることに気づいてしまった。
「どうして、こんなところに…。」
その瞬間、記憶が蘇る。彼女との初めてのデートで、ここを訪れたことがある。
その夜、彼女は笑っていたが、突然姿を消した。
「もっと早く、気付いていれば…。」
絵の中の女性が微笑んだかと思うと、次の瞬間、彼女の顔は完全に崩れ去り、僕はその場から逃げ出した。
外に出ると、寒さが心を冷やす。
「どうだった?」友人が問いかける。
「何も…見なかった。」僕は嘘をついた。あの絵の女性が、彼女であることを知っていたから。もう、二度とここには来るまいと思った。だが、廃墟の奥から聞こえる声が、今も耳に残るのだ。
「もっと深く、埋めておくべきだったなぁ。」
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