
中編
ニセモノ家族
ゆうま 2020年12月5日
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この話は有名なので聞いた事あると思いますが、個人的に好きな話だったので書かせてもらいました!
弟はその日、学校が終わって一度ウチに帰ってから、仲
のいい友達と一緒に近くの公園で遊ぶことにした、らしい。
夕方になってかくれんぼをしていたら、珍しいことに
父、母、俺の家族全員が揃って、その公園まで迎えに来
ていた、らしい。
それが弟には結構嬉しかったらしく、かくれんぼを途中で切り上げ、友達に一声かけて俺らと一緒に帰った、らしい。
家に着いて宿題し始めると、これまた珍しく俺が弟のそ
れを見てやった、らしい。
宿題をやってる間も色々とゲームの話だかなんだかの話
で盛り上がったりして、機嫌のいい俺はずっとそばにいてやった、らしい。
やがて夕食の時間がきて、母が一階のリビングから声を張り上げた。
俺たちは声を張り上げ返事をし、下へ降りた、らしい。
なんでもない日なのに夕食はご馳走で、弟の大好きなハンバーグとかが並んでいた、らしい。
父はさっさと平らげた弟に、俺の、半分食うか?と気を配っていた、らしい。
そんな中、いつも見てるアニメの時間になったのでテレビをつけると、なぜか砂嵐で、ザーザー言うばかりだった、らしい。
すると突然母が弟からリモコンを取り上げ、テレビを消した、らしい。
その顔はニコニコしていて、不気味だった、らしい。
夕食が終わると、ニコニコしながら
母が『ケーキ買ってあるの』
父が『一緒に風呂入るか?』
俺は『新しいゲーム買ったんだけど』
とそれぞれ魅力的な提案をしていたんだが、そこで弟はイタズラを考えた、らしい。
優しくされると意地悪したくなるとか、あまのじゃく的なものだろう。
で、トイレに行ってくると言って帰ってこないという、まぁガキらしい発想だった。
うちのトイレは鍵をかけるとノブが動かなくなる仕組みで、ドアを開けたまま鍵をかけてそのまま閉めると、トイレが開かずの間になってしまう。
この家に越してきたばかりの時は弟がよくイタズラして、頻繁に十円玉を鍵穴に突っ込んでこじ開けるということがあった。
で、弟はその方法でトイレの鍵を閉め、自分は向かい側の脱衣所に身を隠して、呼びにきた家族を脅かそうとした、らしい。
らしい。
何度も言っている、らしい。というのは、実は弟は、公園で友達と別れた後、行方が分からなくなっていたのだ。
弟はかくれんぼの途中に、突然帰ると声を張り上げ、さっさと帰ってしまったのだという。誰かが迎えに来たかどうかは誰も見ていないらしかった。
日が暮れても何の連絡もない弟を俺たちは心配して、警察にも捜索願を出して、町内スピーカーで呼び掛けもした。
父親は弟の友達の家に電話かけてたけど、あんな取り乱したのは初めて見たし、母親なんか早々に泣き崩れてた。
俺はというと、弟が遊んでたという公園の周辺を聞き込みしてまわった。マジで終わったと思った。
一方弟は、例の脱衣所に隠れている最中、自分を探しているという町内放送が聞こえたらしい。
困惑していると、突然ダイニングの扉が勢いよく開かれ、三人がぞろぞろとトイレの前に来て、さっきみたいに、
『ケーキ買ってあるの』
『一緒に風呂入るか?』
『新しいゲーム買ったんだけど』
と声をかけ始めた。
そのトーンはまったく同じだったらしく、弟もただならぬものを感じ、その様子をこっそり見ていたらしい。
すると三人はまた、
『ケーキ買ってあるの』
『一緒に風呂入るか?』
『新しいゲーム買ったんだけど』
と言いながら、トイレのノブをガチャガチャと言わせはじめ、そのうちドアを叩き始めたらしい。
ついには、ドアをブチ破りそうな勢いで、ものすごい音が鳴り響いたらしい。
弟は、『殺される』と思った。
しまいには、ドアが破られ、いやな静寂が流れた。
やがて、その家族っぽい何者かは
『ケーキ買ってあるの』
『一緒に風呂入るか?』
『新しいゲーム買ったんだけど』
と、繰り返しながら二階へ上がっていったらしい。
弟は、家を飛び出し、靴も履かずに玄関を飛び出したらしい。
無我夢中で走って、着いた先は、かくれんぼをしていた公園だった。
公園にはパトカーが止まっており、聞き込みしてた警官に泣きついたらしい。
その連絡を受け、近くにいた俺が駆けつけ、無事弟は見つかった。
その時に弟が警官に話した内容を、こうしてまとめているわけだが、当然警官は信じないし、弟は見つかったしで、プチ家出として片付けられてしまった。
だが、弟は家に帰ってくるなり、真剣な顔つきでテレビを付けている弟をみると、とても、でまかせとは思えない。
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