
私の幼少期、冬の深夜、父と一緒に広い郊外の一軒家で寝ていた。時折、父が金縛りにあっているのを目撃することがあった。夜中、何の前触れもなく、彼が小さく震えているのを見ては不安になり、ゆすったりして目を覚まさせようとしていた。
父は特別な霊感を持っているわけではなかったが、彼の金縛りは珍しいことではなかった。結婚してからも、夜中に金縛りに悩まされていたという。私はその話を笑い話として聞いていたが、彼の体験は想像以上に恐ろしいものだった。
ある夜、父はまた金縛りにあった。その時、彼は頭に奇妙な感覚を覚えたという。プチッと小さな音が響いた。そして、頭皮のかゆみが彼を襲い、思わず掻くと、髪の毛が数本抜けてしまった。最初はちょっとしたことだと思っていたが、次第に彼の髪の量が減っていることに気づいた。
そんなある晩、再び金縛りにあった父は、いつもと違う感覚を覚えた。体が動かせず、目を開ける勇気もなかったが、頭の感覚に集中していると、またプチッという音がした。恐る恐る目を開けると、目の前には白い腕が伸びていた。彼は驚き、必死に目を瞑ったまま、時間が過ぎるのを待った。
やがて解放され、隣で寝ていた母を起こして状況を説明するも、解決策は見つからなかった。それ以降も、金縛りにあうたびに少しずつ目を開け、周囲を確認していた父が見たのは、やはり母の腕ではなかった。女性の姿が近くにいることがわかり、毎回髪の毛を数本抜かれていくのを感じていた。
その後、金縛りが続く中で、父は次第に異変を感じるようになった。ある晩、再び金縛りにあった際、またプチッという感触があり、髪の毛を抜かれる感覚が訪れた。その時、彼は耳元でかすかな声を聞いた。「私の髪じゃない……私のキレイな髪……」と。恐怖で気を失った父は、翌朝に目を覚まし、確認のために鏡を見た。
頭髪に変わりはなかったが、安心したのも束の間、手に血がついていたのを見て再び恐怖に包まれた。それ以降、父の金縛りは激減したそうだ。私もこの遺伝が受け継がれているかもしれないと思うと、心の中で父に謝るしかなかった。彼はいつも笑いながらその話をしていたが、今思い返すと、あの恐怖は本当にリアルなものだったのだ。彼の体験は、私の記憶に深く刻まれている。
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