
さっきまで高2の3月までの地獄をすべて書き込んできた大学1年の俺だ。
ついに高校生活最後の1年、最高学年になった【高3】の話をさせてほしい。
4月中旬、俺は陸上部の最上級生として、新しく入ってきた新入生(高1)の部活体験の指導にあたっていた。
夕暮れのグラウンドで、初々しい1年生たちが1500mのタイムトライアルを行うのを、俺はタイム測定係として見守っていたんだ。
2年前、自分が同じグラウンドで死にかけたことなんて、その時の俺はすっかり忘れて安心しきっていた。だけど、あの怪談は、俺が一番守らなきゃいけない存在を狙って最悪の再戦を仕掛けてきた。
今回は、後輩の命を救うためにかつての恐怖と真っ向から再戦した、高3の4月の怪談をここに詳しく吐き出させてほしい。
夕日が入道雲を赤く染めるグラウンドで、新入生たちが一斉にスタートした。
その走りを眺めていた時、俺の心臓が、ドクンと嫌な音を立てて跳ね上がった。
先頭を猛スピードで突っ走る、期待の新入生の男子。その「すぐ真後ろ」の地面に、あり得ない角度で伸びる【12人目の黒い影】がぴったりと張り付いて走っていたんだ。
それは、俺が2年前の4月に命がけで振り切った、あの時速20キロを超える超高速の並走する影だった。
影はお前を見ろと言わんばかりに、走る新入生のストライドを泥のような黒い手で掴み、肉体を物理的に引きちぎろうとじわじわと距離を詰めていく。
新入生の顔が恐怖と激痛で歪んでいくのが遠目にも分かった。高1からの地獄の経験で、脳裏に最悪のルールが弾け飛んだ。
他の部員や新入生に怪異のことを叫んでパニックを起こしてはならない。
叫べばグラウンドにいる全員が影のターゲットになり、全員がその場で肉体をすり潰されて即死する。
先輩として後輩を救う唯一の脱出ルールは、【自分も即座にグラウンドへ飛び出し、これまでの2年間で培った最高速度のスプリントで新入生と影の間に強引に割り込み、自分が代わりに『並走デスゲーム』のターゲットを引き受け直して、そのまま当時の限界を超えた速度でバックストレートを駆け抜けなければいけない】。
怪異の標的を自分に上書きし、自分の脚力だけで引き剥がすしかなかった。
「おい、そこをどけェェェッ!!!」
俺はストップウォッチを投げ捨て、現役トップランナーとしての全爆発力を足に込め、グラウンドへと跳び出した。
後日談:
- 俺はその場に倒れ込み、激しく咳き込みながらグラウンドの土を掴んでいた。 突き飛ばされた新入生は、ただ足がもつれて転んだだけだと思い込んでおり、怪異には気づいていなかった。 【一度生き延びた生存者に対して、その大切な後輩や周囲の人間を人質にするようにして再び襲いかかってくる、執拗で凶悪な因縁の呪い】だった。 だけど、あれは絶対にただの部活中の気の迷いなんかじゃない。 なぜなら、あの怪談があってから大学1年になった今でも、俺は【夕暮れのグラウンドで誰かが走っている後ろ姿を見たり、陸上部の後輩たちと連絡を取るだけで、あの並走する影の冷気がフラッシュバックし、次はあいつらが殺されるんじゃないかと猛烈な恐怖で全身の血の気が引く】んだ。 特に4月になると、あの日グラウンドを全力で蹴り上げた両足の筋肉がミシミシと痛み出し、冷や汗が止らなくなる。 次は、高3の5月だ。
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